ギャラクシーエンジェル


【出典】…アニメ テレビ大阪 ギャラクシーエンジェル(2001-2004) 企画・原作:ブロッコリー 制作:マッドハウス
 
【説明】…ブロッコリーによるキャラクターメディアミックス企画「Project G.A.」の一環として制作されたアニメ作品
「Project G.A.」第1弾のアニメ版として、2001年から2004年まで4度に渡ってシリーズ放送された。
トランスバール皇国近衛軍に属する特殊部隊である「ギャラクシーエンジェル隊」。
その任務は、古代文明が残した科学技術「ロストテクノロジー」の回収なのだが、実際にやっている事は、猫の捜索や誘拐事件の犯人捜し、VIPや超重要犯罪者の護送、アステロイドに放置された粗大ゴミの処理や惑星に刺さった釘抜きなどと、ほとんど「何でも屋」の状態。
本業で回収しているロストテクノロジーも、文明の発展にどう寄与したのか疑問を抱かせるようなものばかり…。
なんでもありな登場人物たちと、なんでもありなロストテクノロジーが織り成す、1話完結式ドタバタSFギャグコメディ。
宇宙の運命をも巻き込み、エンジェル隊は今日も活躍する!
 
 
【独断】…奇跡のアニメ
二次裏で評判だったアニメ作品を見ていこうツアーその6。『ギャラクシーエンジェル』。
「評判だった」というより、二次裏住人の「心のふるさと」と言っても差し支えない作品である。多くの二次裏住人たちがこの作品から「カオスの楽しみ方」を学び、見事に人の道を踏み外していった。
 
…それにしても、まぁ、改めて見ると、『ギャラクシーエンジェル』ってクソミソにダサいタイトルである。「来夢来人」並にダサい。
ブロッコリー産の企画はいつもいつも時代から2テンポ遅れている。
デ・ジ・キャラット』(1998-)も「90年代も終わりだってのに語尾に「にょ」はねーだろ」などとよく言われたものである。
エンジェル隊の面々を見ても、原色髪の古臭いギャルゲー風なキャラしかいない。なんと言うか、末期の萌えオタク向けアニメといった風情だ。ハッキリ言って、ジャケットだけで判断するとかなりつまらなそうな作品に見える。
 
…が、しかし、これが神レベルに面白い内容だったりするから世の中分からない。
ドタバタSFギャグコメディとは言ったものの、ヒロインがハゲる、老女になる、クリーチャー化する、なんてのは当たり前。それどころか平気で殉職したりするし(次の回では当たり前のように復活している)、エンジェル隊が丸々全滅する事も少なくない。さらにはトランスバール皇国が滅ぶこともあるし、なんとなく宇宙が崩壊する事すらある。
それらを「ドタバタ」「ギャグ」という言葉で全て片づけてしまうのが『ギャラクシーエンジェル』なのだ。
  
 
ギャラクシーエンジェル』の原作は同名のゲーム作品である。メディアミックス企画として、ゲームの開発中にアニメの第一期がテレビ放送された。
ゲーム(原作)の方はアニメとは雰囲気が全く違っていて、かなり大真面目に宇宙戦争をしている。
大雑把に言えばサクラ大戦形式のドラマチックアドベンチャーゲームで、アドベンチャーパートではキレイにドラマをして、シミュレーションパートではストイックに戦闘を行う。普通に良い出来の作品だ。
ゲーム版は、「平和のために宇宙で戦う美少女達」といった、本来の世界観・キャラ設定をストレートに用いた内容になっていて、こちらはファンから「綺麗なギャラクシーエンジェル」と呼ばれている。
テレビアニメ版は、そもそも明確に敵と言えるような組織・対象は存在しない。メインキャラクターたちも、みんな根は良いのだが、基本的に自分の欲望に忠実で、粗野で暴力的になっていたり…と、ゲーム版とはかなり違う性格に改変されている。

 
テレビアニメ版がなんでこんなムチャクチャな内容になってしまったのか、Wikipediaさんに聞いてみよう。

アニメ版第1期の制作立ち上げに当たって、シリーズ監督を共同で担当する浅香守生と大橋誉志光、シリーズ構成を受け持つ井上敏樹三者が、「全26話(実際には2話分が削られた)で、なおかつ1話当たりの時間が正味10分というフォーマットではオリジナル企画通りのアニメ化は困難なので、アニメ版は、たとえオリジナル企画の設定・ストーリーから大きく外れたとしても、主人公5人の個性を前面に出した内容にするのが妥当である」と判断した事による。
この結果、事実上の原作であるゲーム版の開発の遅れも影響して、本作品はタイトルと主要登場人物が共通でありながら、ゲーム版など原作系諸作品とアニメ版ではストーリーや登場人物の性格・プロフィールなどが大きく異なるというメディアミックス企画としては前例のないものとなった。

要するに、アニメ放送の都合上、公式が公式をパロディ化してしまったのである。
  
 
アニメーターに好き勝手にやらせると、大抵ロクな事にはならない。
「パロディ」という名分を得て、キャラクターは崩壊し放題。「ロストテクノロジー」という設定を逆手に取って、突飛な脚本も書きたい放題。
第一期こそ、まだまだ様子見で、わりと普通にドタバタコメディをやっていたのだが、「どうももっと自由にやっていいらしい…」と踏んだ第二期からは、悪ふざけが本格化する。そして、「なんでもありなカオスアニメ」としての地位が確立された第三期以降は、一つ一つのエピソードにオチを付ける事すら放棄してしまう。
…そして、ひどい話ではあるのだが、このアニメーターたちの悪ふざけが、結果的に抜群に面白かったのである。
エスカレートする二次設定、投げっぱなし過ぎるギャグ、他のアニメ作品のひどいパロディ、大御所歌手の間違った使い方、…等々。『ギャラクシーエンジェル』は作品それ自体がアニメーターの実験の場となり、そしてファンがそれを寛容(大歓迎)するという、奇跡的に幸福な作品となった。
設定だけが与えられ、あとは好きにやっても良いという素晴らしい土壌。素人がやっている東方の二次創作ですらあれだけ面白いのだ。プロが全力で悪ふざけをしたらどんな事になってしまうのか、これは是非ともその目で確認して欲しい。

 
…で、そんなふざけた作品を二次裏住人たちが好きにならないはずもない。
ふたば☆ちゃんねる」二次元裏板のネタの黎明期は、『ギャラクシーエンジェル』第三期の放送期間とほぼ同じ。エンジェル隊の面々は気が付けば二次裏キャラとして定着し、多くの派生ネタをもたらした。
 
特に、「ババア」ことフォルテ・シュトーレンは、アニメシリーズを終えて5年経つ現在でも、未だにふたば内で人気が高い。
フォルテはエンジェル隊のリーダーにして最年長、最長身、最巨乳。火器の扱いに長けたセクシーでスタイリッシュな美人…であるはずなのだが、その豪快な気質と、男っ気の無さから、みんなに「姐さん!」「ババア!」と呼ばれ親しまれている。(実年齢は22歳)

山口眞弓さんのハスキーボイスによる気っ風の良い演技が、フォルテのキャラクターを成立させていると言っても過言ではない。他のエンジェル隊が、みんなわりと可愛らしい感じの声なので、フォルテの存在は一層際立つ。
そんな姐さんがたまに見せる乙女チックな表情も、これまたたまりません。そういう場面が本編で出ると、『ギャラクシーエンジェル』のキャプチャースレには「ババァ結婚してくれ!」のレスが殺到したものである。そう、「ババァ結婚してくれ!」のフレーズはフォルテが元祖なのだ。

 
そんなこんなで見所満載のアニメ『ギャラクシーエンジェル』。
このくだらなさ、カオスっぷりは必ずしも万人受けはしないと思うのだが、興味を持たれた方は是非とも一見して欲しい。
…興味深いのが、現在ネットを彷徨いていると、「ギャラクシーエンジェルが好きだった」という女子中高生をしばしば見掛けるのである。
ブロッコリーは一時期(2002年2月3日-2004年3月28日)テレビ東京の日曜9時30分〜10時00分枠を持っていて、『ギャラクシーエンジェル』の第二期、第三期はその枠に放送されていたのである。(第一期はCS、第四期は深夜帯の放送)
つまり、『ギャラクシーエンジェル』は、「日曜朝のアニメ」として、オタクのみならず子供達にもしっかりと楽しまれていたのだ。聞くところによると、当時の女子小中学生の間では結構な人気だったんだそうである。(一応、前番組は『コメットさん』だしな)
しかしまぁ、あんなひどいアニメをよく日曜の朝なんかにやっていたものだ…。
 
…またブロッコリー枠が復活してくれると嬉しい。
 
おわり

ギャラクシーエンジェルX(1) [DVD]

ギャラクシーエンジェルX(1) [DVD]

 
【追記】…第5期制作はどうも難しいらしい
続編の『ギャラクシーエンジェる〜ん』を、ファンは誰も「第5期」とは呼んでいない…。
実際、タイトルも違うしキャラクターもキャストも制作会社も全部違う。…が、それ以上に内容面での不評が激しく、心情的にも「続編」とは認められていないといった雰囲気だ。
私はまだ、『る〜ん』の方は見た事がない。制作会社が変わってキャラも一新されたという時点で、どうにも倦厭しっぱなしである。「これはこれで面白い」という感想が抱ければ上々なんだが…果たしてどうか…。
 
エンジェル隊の方は『CRギャラクシーエンジェル』で、2008年末からまた活躍しているようだが、ブッコロリがパチンコで小金を稼いだら、またマッドハウスにアニメを作ってもらうとかないのかね?
ちなみに『CRGA』の販売はセガサミーホールディングス(サミー)と資本提携をしているタイヨーエレックで、なぜかアニメ『る〜ん』の制作をしているのは、SANKYO系列のサテライトである。
現在のブッコロリはソフトバンク系列ガンホーの傘下。マッドハウスの現親会社であるインデックスが傘下にタカラトミーも持っていて、そのタカラトミーガンホーと協業しようという動きもあるらしい。…これって何か期待してもいいのだろうか…。
『旧GA』の著作権を共有しているバンダイビジュアルのお許しさえ出れば、復活の可能性もなくはないのだが…。
…というか、なんだか、もう、ややこしすぎてわけが分かりません。
そもそもブッコロリの経営が“ハイテンション”過ぎたのがいけないわけで…。
 
とりあえず、『旧GA』未見の方には、個人的には第二期『ギャラクシーエンジェルZ』から見てみる事をオススメしたい。
第一期も面白いけど、わりとまだ普通のドタバタなので、「なんだフツーじゃん」と思われるかも知れない。まずは二期以降の悪ふざけの真髄を味わってみて欲しい。
…しかし、敢えて『る〜ん』から入ってみるのも乙である。かなり希有な例だとは思うが、マイノリティ魂に溢れる人にはオススメ。

 
おしまい