魔法少女まどか☆マギカ


【ネタ】…アニメ 魔法少女まどか☆マギカ(2011.1-2011.4) 制作:シャフト 監督:新房昭之 シリーズ構成:虚淵玄
 
【説明】…シャフト制作による日本のテレビアニメ作品
2011年の世界を舞台に、願いを叶えた代償として「魔法少女」となり、人知れず人類の敵と戦うことになった少女たちに降りかかる過酷な運命を、優れた魔法少女となれる可能性を持ちながらも傍観者として関わることになった中学生・鹿目まどかを中心に描く物語。
ニトロプラス所属の虚淵玄がシリーズ構成および全話の脚本を、『ひだまりスケッチ』の原作を手掛ける漫画家の蒼樹うめがキャラクター原案をそれぞれ担当。虚淵が描く緻密で重厚な設定のストーリーに、蒼樹のキュートで可愛らしい絵柄のキャラクターが組み合わされており、こうした組み合わせは岩上の提案による。音楽は梶浦由記が担当した。主要登場人物たちの敵となる「魔女」のデザインや戦いの場となる異空間の描写には劇団イヌカレーが起用され、「メルヘンホラー」とも形容される独自の世界が描かれている。
Wikipedia「魔法少女まどか☆マギカ」より>
 
 
【独断】…恭介ほんとマジぶん殴りたい
アニメを見なくなって久しい。
ここ数年、『キングオブファイターズ』のMr.ビッグの如くボディコン美女を数人引き連れて右手でおっぱいを鷲掴み左手でブランデーをラッパ飲みのリア充生活を送っており、アニメなどというチェリーボーイの現実逃避ツールにかまけている暇など全くなかったのである。
 
スキンヘッドにグラサンのそんなある日、いつも聴いているラジオ番組『おぎやはぎのメガネびいき』で、パーソナリティの矢作さんが突然本作『魔法少女まどか☆マギカ』の話をし始めた。
何でも2012年に入ってから『まどマギ』を見始めてドハマりしたらしく、フリートークの時間をフルに使って1時間近く『まどマギ』を大絶賛。
その熱は一度では収まらず、番組は2012年1月26日の放送から約一ヶ月に渡り『まどマギ』の話題で埋め尽くされ、2月23日のスペシャルウィークでは、『まどマギ』に出演した声優陣をゲストに呼び、2時間番組で2時間丸々『魔法小木おぎか☆オギダ』というパロディコントを行うという暴挙にまで及んだ。
 
いつも何事にも「はー」「うん」「そうだねぇ」くらいしか感想を言わない矢作さんがそこまでハマった作品…
これはひょっとして、アニメに食指が動かなくなってしまった私の枯れ果てた心にも響くのではないだろうか?
2011年、いや、近年最も話題となったなったアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』。私も意を決して全裸美女が組体操で作った人間椅子から腰を上げレンタルビデオ屋にバイクを走らせた(バイク持ってない)。
 
 
虚淵玄先生の描くストーリーを拝見するのは、個人的にはゲーム『鬼哭街』をプレイして以来9年ぶりになる。
虚淵先生というと、やはりハードなアクションとバイオレンス、そして苛烈なストーリーという印象がある。
まどマギ』においても、一見「牧歌的な萌え魔法少女モノ」と見せかけておいて、実際は「少女達が過酷な運命に挑むストーリー」であるということはあらかじめ噂には聞いていた。
人気作なだけあってネットで散発的にネタバレにも触れていたし、大体予想のつく内容かなと思っていた。
 
…ところが…ッ
 
これが実際に見てみると私の安い予想を遙かに上回る素晴らしいデキの作品であった。久々に「アニメってやっぱりいいなぁ!」と心底思った。
正直、見る前は「魔法少女モノの規定路線を残虐ファイトで裏切ってみせたから世間が騒いだんだろ」くらいに思っていたのだが、そんな安易な作品ではなかったのである。

ピンクがまどか、黄色がマミ、赤が杏子、黒がほむら、青だか緑だかよくわからないのがさやかちゃん
 
まずはネタバレなしで感想を書いてみよう。

キャラクター原案は、可愛らしく柔らかみのある絵柄に定評のある蒼樹うめ先生。
蒼樹先生の描く女子中学生達が、キュゥべえというマスコット的な動物と契約し魔法少女となって、魔女と呼ばれる怪物たちと戦っていく…というのが、一応物語の大筋である。
魔女とその使い魔は通常の絵柄とは違う質感で描かれており、サイケなデザインのものが多く、どれもかなり不気味な雰囲気を醸し出している*1。そしてその不気味なデザインに違わず、人を呪い、殺すことのみを目的に存在している。
 
不気味で恐ろしい魔女に戦いを挑んでいく魔法少女たち。そしてどうにも胡散臭い魔法少女の牽引役であるキュゥべえ
前述したが、私はこのアニメが「残酷な展開が多いらしい」ということは予め耳にしていたので、ある程度展開は予想できていたつもりだった。
「多分、魔女に殺されてしまう魔法少女もいるんだろう」
「こちらが“魔法少女”で敵が“魔女”ということは、何か互いに嫌な関係性があるんだろうな」
そのくらいはなんとなく見当をつけながら見ていたのだが…
  
 
いやー、嘗めていました。
いやもう、何度も言うけど、実際見てみたらこれが半端じゃないのである。
どれくらい嘗めていたかというと…
 
ナーメナメナメ、ペーロペロペロ、ナーメナメナメ、ペーロペロペロ、ナメナーメ、ペッペロリーナ、ナメペロナメペロ、ナメナメナメナメ、ペロペロペロペロ、ナッペロナッペロ、ナメンペロスナメンペロス、ナメナメッシーナ、ペペロニーナペペロニウス、ナーメナーメナメナーメ、ペーロペーロペロペーロ、ナメントスメントス、ペロリペロリア、ナーメナメナメナメナメナメナメナメナメナメェ、ペーロペロペロペロペロペロペロペロペロペロォ…
 

…ネタバレ抜きの感想で言えることは上記が限界なので、以下ガンガンネタバレしながら書いていきます。
というか、今回は紹介エントリーというよりも純粋に感想を書きたいので、『まどかマギカ』をまだご覧になっていない方からすると説明不足の点も多々ありますが、よろしければなんとなくでお付き合い下さい。
 
正直なところ、中盤までは凄く面白いとは思いつつも「怠いな…」「これでいいのか?」と感じる部分もあったのである。
それというのも、まず『魔法少女まどか☆マギカ』というタイトルにも関わらず、主人公の鹿目まどかがなっかなか魔法少女にならないのだ。
まどかは同じ中学の先輩である巴マミや親友の美樹さやかなど、魔法少女となった他のキャラクターたちと行動を共にするのだが、自分自身がキュゥべえと契約して魔法少女になることはなく、魔女との戦いも基本的には傍観者の立場でしかない。
いつも怖い思いをしながら周りを気遣ってはいるものの自分が直接戦うことはない。悪い言い方をすれば、ただ迷い、悩み、戸惑っているだけなのである。
そんなまどかに対し辛辣な言葉を浴びせるキャラクターもいる。実際、大半の視聴者も途中までまどかに対してあまり良い感情は抱かないはずだ。
まどかなりに一生懸命なので応援したくはなるが、物語が進むほど状況は悪化していくばかりで、それにただ振り回されているようにしか見えないまどかに対し、もどかしさを感じずにはいられない。
また、魔法少女たちを取り巻く一つ一つのエピソードも鬱屈としている。イヤ〜な雰囲気のリードがあると(いわゆる死亡フラグ)、そのあとに見事に悲劇が待ち構えている。
「うあぁぁ…それ見たことか…」というような具合に、視聴者の悪い予感はその想像の半歩上の形でどんどんと的中していく。
  
 
そんなわけで、見ていて良質な緊張感に包まれつつも、同時に、「果たしてこの物語はこれでいいのか?」と思ってしまう。「これは一体どうすればいいんだ?」と思ってしまうのだ。
何せ、全体的に余りにも救いようのない話なのだ。
魔法少女の牽引役であるキュゥべえの真の思惑は魔法少女の魔女化*2であり、どうあっても登場人物達はその運命には抗えない。魔法少女にならなければ魔女には対抗できない。しかし魔法少女になってしまえば、死ぬまで戦い続けるか、絶望して魔女になってしまうか、そのどちらしか道は残されていない。
一体どういう展開になれば彼女たちが「ただでは負けなかった」というオチになるのだろうか。 
銃や剣が飛び交うスピーディーで迫力のある戦闘シーンも良い。少女たちの真剣な思いが交錯するドラマも良い。緊張感のあるストーリーももちろん良い。
しかし、それで終わっていいのか? 肝心のまどかは惑いっぱなしでいいのか?
どういうウルトラCがあればこの鬱屈とした物語を覆せるというのか。
 
…というのが、第9話までの感想。
魔女との戦いで巴マミが死に、美樹さやかは周りを呪い魔女となり、佐倉杏子は魔女となったさやかと刺し違える。
最終的に絶望と呪いしか生まないものだと明かされる魔法少女のシステム。
そして、生き残った魔法少女暁美ほむらただ一人という状況で、最強最悪の魔女「ワルプルギスの夜」がまどか達の住む見滝原市に迫る。まさに絶体絶命。
仮にワルプルギスの夜に勝ったところで、これまでの犠牲者のことを思うと、そして永久に続く呪いの連鎖を思うと、そこに“勝利”など初めから存在しない。
悲壮感だけが物語を支配する。
 
しかし! 本作『まどかマギカ』は最終的に覆すのである。これを見事に。
ここまでネタバレしておいてなんだが、「どうやって覆したか」は本編の大ヤマ場に当たるので書くのを避けたい。
初めてその場面を見た人は「うおおおォッ!! そうきたかぁぁぁぁぁぁァッッ!!」となること必至である。
 
第10話から最終話(第12話)までは、ほむらとまどかがメインの話となる。
それまで不意に現れては、妙に魔法少女や魔女のシステムに訳知りであるところを匂わせていた魔法少女ほむら。彼女の正体が時間遡行者であることは、ほむらの過去をそのまま描いた第10話で明らかになる。
時間を操る能力を持つほむらは、ワルプルギスの夜に殺されてしまう運命にある友達のまどかを救うために時を遡ってきた。
何度もワルプルギスの夜に挑み、その度に敗北し、まどかを失い、そしてまた時を遡る。劇中の時間軸はほむらにとっては“5周目”に当たる。
時を遡ってきたほむらは、まどかにとっては出会ったばかりの転校生でしかない。
繰り返される出会いと別れ。繰り返すほどに離れていく気持ち。誰からも望まれず、誰からも理解されず、孤独に魔女を狩り、武器を集め、ただひたすらまどかを護ろうとし続けてきたほむらの姿がそこで明かされる。
そして、ほむらと一緒に戦いながら、悲劇的な最期を迎えていく別の時間軸の魔法少女まどかの姿が描かれる。
  
 
第11話でワルプルギスの夜との戦いを控えたほむらは、堪え切れず、まどかに思いを吐露する。

…私ね、未来から来たんだよ。何度も何度もまどかと出会って、それと同じ回数だけ、あなたが死ぬところを見てきたの。
どうすればあなたが助かるのか、どうすれば運命を変えられるのか、その答えだけを探して、何度も始めからやり直して…
ごめんね。わけわかんないよね…気持ち悪いよね。
まどかにとっての私は、出会ってからまだ1ヶ月も経ってない転校生でしかないものね。
だけど私は…私にとってのあなたは…
 
繰り返せば繰り返すほど、あなたと私が過ごした時間はずれていく。気持ちもずれて、言葉も通じなくなっていく。
たぶん私は、もうとっくに迷子になっちゃってたんだと思う。
あなたを救う。それが私の最初の気持ち。今となっては…たった一つだけ最後に残った、道しるべ。
わからなくてもいい。何も伝わらなくてもいい。それでもどうか、お願いだから、あなたを私に守らせて。

このほむらの言葉を聞いた時には「お願いだからこいつらだけでも報われてくれ!」と思わざるを得なかった。
そして、この二人の絆こそが鬱屈した物語を覆す大きなカギとなっていく。 
 
結果的にほむらはワルプルギスの夜に再び敗れる。
しかし、ほむらが何度もまどかを救おうとしたことは決して無駄ではなかった。
キュゥべえにいざなわれ、ほむらに修正され、一番悩み、一番苦しみ、魔法少女と魔女のことを一番考えてきた本編(5周目)のまどかは、それまでのまどかにはなかった決断を下し、絶望に収束しかかっていた物語に大どんでん返しを喰らわせるのである。
魔法少女にもならず、絶望もせず、全てを見て、全てを知って、ただただ堪えてきたまどかだからこそできる大反撃だ。
…どんな反撃かは…こればかりは実際に見ていただきたい。眼球がニュートリノ並の速さで吹っ飛ぶくらい驚くから。
  
 
ゼーガペイン』の時にも書いたが、私は悲劇・喜劇は問わず、物語のオチはある程度明確に描かれたものが好きだ。別にわかりやすい“決着”が着かなくてもいい。ただ、その物語の中で「誰が何をなして」まで描いたのなら、その結果が「どうなった」までは描いてほしい。
思わせぶりな道中で「風呂敷は広げたけど全然まとめきれませんでした。テヘッ☆」だと、その面白かったはずの道中がただのハッタリと化してしまう場合がある。
そういう意味でも、本作『まどかマギカ』は良かったなぁと思う。ハイパーオーラアルティメット強引なまとめ方かもしれないが、終盤の畳み掛けたるや凄まじく、最終的には「これでいいのだ!」としか言いようのない結末を見せてくれる。
 
眠っていたアニメ魂に再び火を着けてくれた『魔法少女まどか☆マギカ』。
可愛らし過ぎる絵柄とタイトルで倦厭される方もいらっしゃるかもしれませんが、アニメ好きならずともお奨めです。
できれば春に見てください。…えー…今これ書いてるの9月なんで、半年ほど寝かせてベストなタイミングで見ましょう。
僕と契約して地下闘技場のチャンピオンになってよッ!
 
おわり

 
【追記】…アクションがいい
あまりずーっとビシバシ戦い続けるアニメでもないのだが、魔法少女の戦闘シーンはカッコイイものが多い。
魔法少女たちは魔法を使いながら自分自身も飛んだり跳ねたり躍動的な動きをするし、魔女との対峙も緊張感を煽るのでこれまたグッとくる。
 
特に頭抜けて素晴らしいのが、第11話のワルプルギスの夜とほむらの決戦。
街中に暗雲と霧が立ち込め、霧に紛れて使い魔たちのパレードが始まる。そしてカウントダウンと共にパレードの最奥に昂然と姿を現すワルプルギスの夜
それに対し、調達できる得る限り最大最強の火力を以て挑みかかるほむら。
もうこのシーンは格好良すぎて、本当にテレビの前で身動きが取れなくなった。
バズーカ数百連射→鉄塔ぶち当て→タンクローリー直撃→ミサイル連射→大規模サーモバリック爆破…このほむらの怒涛の先制攻撃が凄まじいのなんの。
アクションゲームの難ステージを繰り返していると、相手の次の一手を予知した上で反射神経を超える速さで手際良く行動が取れたりするが、このシーンはまさにワルプルギスの夜と何度も戦ってきたほむらならではのコンボと言える。
このシーンばかり繰り返し繰り返し何度も見た。
ワルプルギスの夜の登場からして「ボス戦!」という感じの演出がなされていて否が応でも盛り上がります。
必見。
  
 
おしまい

*1:登場人物の美樹さやか曰く「グロい」

*2:主に破格の潜在魔力を持ったまどかの魔女化