時をかける少女


【ネタ】…アニメ 時をかける少女(2006) 原作:筒井康隆 制作:マッドハウス 監督:細田守
 
【説明】…角川ヘラルド映画(現角川映画)から公開された日本のSFアニメ映画
東京の下町にある高校に通う女子高生・紺野真琴は、ある日踏切事故にあったのをきっかけに、時間を過去に遡ってやり直せるタイムリープ(時間跳躍)能力に目覚めてしまう。
最初は戸惑いつつも、遅刻を回避したり、テスト問題を事前に知って満点を取ったりと、奔放に自分の能力を使う真琴。そんなある日、仲の良い2人の男友達との関係に、微妙な変化が訪れていく…。
原作は筒井康隆の同名の小説作品。監督は細田守、アニメーション制作はマッドハウス。各国の映画祭などで多くの賞を受賞するなど、高い評価を受けた。キャッチコピーは「待ってられない 未来がある。」

 
【独断】…とりあえずそのクソ自転車を早急に処分しろ
二次裏で評判だったアニメ作品を見ていこうツアーその7。『時をかける少女』。
二次裏のみならず、ネット全体、またリアル口コミで話題になった作品である。公開当初の興行規模は非常に小さかったのだが、その評判の高さから、フィルムを使い回す形で次々と上映館を増やしていったそうだ。
かなりのロングランだったため、二次裏でも『時をかける少女』のスレッドは大分長い期間見掛けることができた。
 
基本、私はとしあき二次裏住人)の間での評判は信じることにしているのだが、この作品に関してはちょっと褒められすぎの感もあって、見るのを躊躇ってしまっていた。
同時期にやっていたアニメ映画、『ブレイブ・ストーリー』や『ゲド戦記』などの評判がクソミソだったせいもあって、「相対的に高評価になっているんだろう」というような感じで捉えていたのだ。実際、それらの作品を引き合いに出した上での賞賛も多かった。
そもそも“単なる”『時をかける少女』である。
普通の女子高生が日常生活をちょいと数日遡ったところで、物語として何か爆発的に面白いことなどあるのだろうか。
縄文人TENGAを与えて神として崇められるとか、葛飾北斎に現代のエロゲをやらせて絵画の歴史を塗り替えるとか、オルドビス紀まで遡ってウミサソリを無造作にぶん投げるとか、そこまで痛快でロマン溢れる時間旅行などはしないだろう。
98分という映画の尺で、やるのはSF青春物語。ともすればかなり退屈な“良質アニメ”というオチもありえる。
 
ただ、「としあきに大好評」という一点が3年ほど引っかかっていて、ついにこの間レンタル視聴に至ったわけである。
我ながら、4クールアニメを二日三日で見終えるバイタリティがあるなら、2時間に満たない作品を見るのにそこまでビビる必要はないだろうと思うし…。

 
…で、見てしまえば、案の定、非常に面白く素晴らしい作品だった。
真面目にドラマだけで通してしまうと私みたいなアホがだれる…ということを、制作側が非常によく解っていらっしゃる。途中途中だけ見ていると完全にバカアニメである。
それというのも、主人公の紺野真琴が劇的にアホなのだ。序盤は彼女の挙動を見ているだけでも面白い。
 
不意にタイムリープ(=時間跳躍)を身に付けてしまった真琴。
並の俗人(変な言葉)であれば、そんな力を手に入れたら自分の人生を一変させるような悪用をするだろう。ギャンブルの結果を知ってからやり直すとか、好きなだけ犯罪行為をしてそれをなかった事にするとか…。そこまでいかずとも利己を追求するのが当たり前だ。
しかし、真琴の場合はそんなくだらないことにはタイムリープを使わない。
もっとくだらない事に使う。
妹に食べられてしまったプリンを取り返す。カラオケでタイムアップを繰り返し合計10時間歌う。遊びの野球でピッチャーの配球を予習する。学校に遅刻したのをなかったことにする。夕飯のリクエストを早めに出して好きなモノを食べる。などなど、本当におバカさんな使い方しかしない。
 
ところが、あるとき、親友だと思っていたクラスメートの間宮千昭から「俺と付き合わないか」と告白され、狼狽した真琴はタイムリープを使ってそれをなかった事にしてしまう。
人の想いまで書き換えてしまって良いのか、自分の気持ちはそれで良いのか、真琴はアホなりに悩み始める。

 
これ以降の話はネタバレになってしまうので、もしよろしかったら実際に作品を御覧頂きたい。
当然、この先が物語として俄然面白くなる。ここまでだとドラえもんの道具をイタズラに使うのび太くんとさして変わらないが、真琴は、この後、アホなりに色々と必死に奔走することとなる。
アホで元気の良い描写、青春真っ直中な雰囲気、不意に訪れる危機、驚きの展開。…ただの高校生が日常をやり直すという、ある意味地味といえば地味な題材なのだが、それをフル活用して、見ている人間の心を大きく揺さぶってくる。
そして、その最後は、この上なく切なく、爽やかで、感動する。

 
見始めてから知ったのだが、この作品の監督って細田守先生だったんだな。
細田守先生といえば、個人的には、『おジャ魔女どれみドッカ〜ン!』や『明日のナージャ』のスタッフとして不意に現れ、神レベルの演出をしていく謎のオッサンだ。
私は制作者に関してとんと疎いので、「このスタッフはどうこう」ということはほとんど分からないのだが、細田守先生が担当された回は作画も雰囲気(演出)も異様なほどクオリティが高く、いやが上にもその名前を覚えてしまっていた。
人物の丁寧な描き方は勿論、背景の描写が、ある意味リアル以上にリアルな迫力があって、見ているだけでグアァッと引き込まれてしまう。
本作『時をかける少女』も劇場公開作品なだけあって、終始質の高さを見せつけてくれる。

 
月並みな事を言うと、アニメ好きじゃなくても十二分に楽しめる作品だ。
未見の方には是非とも御覧になって欲しい。絶対に損はしない。
 
もし、私がタイムリープを使えたら…それは2009-10-22のエントリー「タイムトラベル!」を参考に。
まぁロクなことはしない。
 
おわり

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