親子クラブ


【出典】…アニメ フジテレビ 親子クラブ(1994-) 原作:エイケン 制作:エイケン・フジテレビ
 
【説明】…フジテレビ(関東ローカル)で月曜日と火曜日の4時25分から放送されているアニメ番組(ミニ番組)
地球のあらゆるものの勉強をしに、日本の花咲家に現れた宇宙人の親子・ロンパパとルンちゃん。花咲家の家族はそれを受け入れ、楽しくも騒がしい生活が始まった。
一回5分ほどのミニ番組で、生活の知恵や料理などをアニメと実写でわかりやすく紹介する。
開始当初は夕方に放送され、独立した番組であった。現在は『めざにゅ〜』に内包される形で放送されている。
制作は『サザエさん』と同じエイケンで、フジテレビで現在放送されているアニメの中では『サザエさん』(1969-)、『ちびまる子ちゃん』(1990-)に次いで、3番目に放送期間が長い「長寿アニメ」である。
  
 
【独断】…ロンパパはキレ過ぎ
見ていて処置に困るアニメの筆頭、それが本作『親子クラブ』である。私も視聴を始めてからかれこれ8年ほどになるが、その内容をどう捉えたら良いのか、未だに全く分からない。
明け方までボケーっとテレビに張り付いていると、不意に画面に現れ、茶の間をカオスのどん底に突き落とす。まるでデスゲイズみたいな作品である。
 
まず、放送日や放送時間からしてむちゃくちゃ変則的。
基本的に月曜日と火曜日の週2回放送。この時点でちょっと分かりにくい。しかも、スポーツ中継などにより他の曜日に放送される事もしばしばある。その上、親番組である『めざにゅ〜』の放送時間によっては、なぜか単独番組として放送されることもあったりする。さらに言えば、この番組、そもそも開始当初は夕方に放送されていたはずなのだ。なぜ朝4時25分という、お天道様半周分も離れた時間に移行しているのか…。
ミニ番組ゆえの軽快なフットワーク、と言えば聞こえはいいが、早い話、雑な扱いをされていて放送時間が定着しないのである。視聴していて混乱する事この上ない。
 
肝心の内容も結構イカレている。
概要として言えば、本作は「おばあちゃんの知恵袋」的なサムシングを教授する番組だ。ことわざの意味であったりとか、料理の一工夫であったりとか、掃除のコツであったりとか、その辺が紹介される。まぁ、タメにならない事もない。
…が、変な話なんだが、別にそれをメインにして構成されているわけでもないのである。一本の話の中に、お座なりに知恵袋が混入されている感じで、それがドラマそのものにはあまり絡んでこない。だから、しょーもないコントの途中に、突然講釈が入るような印象で、どうにも不思議な後味を残すのだ。
 
 
主人公のロンパパもワケが分からない。
真っ黄色のちょび髭ラッパ鼻、というサイケなデザインに関しては、この際置いておく。宇宙人なんでそれくらいは許す。
それよりも、ヤツは居候なのに、なぜあんなにも態度がでかいのか。『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)な口調で、基本、ワガママと文句しか言わない。
居候でありながら、「ママ、夕飯は○○にしろ!」くらいのセリフはデフォルト。
花咲家の大黒柱であるお父さんに対して、「やっぱり喜八(パパ)、安月給だった!」と暴言を吐き、
好物が食べられないと、「おばあちゃん、なんとかしろー!」なんて八つ当たりまでする。
しまいには、部屋に籠もりがちなお兄ちゃんを見て、「何かいかがわしい本読んでるかもしれんぞ?」などと最低発言。
宇宙人を地球の常識で測ってはいけないのかも知れないが、ロンパパの妻子は至って真っ当なようで、あの怠惰で横柄な性格は、どうもロンパパ特有のものらしい。(一応フォローすると、人情と正義感には厚い)
…まぁ、そりゃ、トラブルメーカーがいてくれた方が話は回り易いんだろうが…。
  
 
誰が見る事を前提にしているのか分からない放送時間、あまり本気で教養にも寄っていかない番組構成、必然性もなく地球外生命体に任された主役の座。それらが合わさり、見事なまでに不協和音を奏でている。
私の文章だけだと、あまり伝わっている自信がないが、実際リアルタイムで見てみると、かなり変なアニメなのである。
制作は『サザエさん』を作っている、あのエイケンだ。公序良俗に則する事に掛けて、右に出るモノはあんまりいない、あのエイケン。チャンピオンで連載していた、エロマンガの方の『エイケン』ではない。
…ということは、『親子クラブ』のカオスぶりは、別に狙って生じたものではないのである。真面目な人達が「ほどよいユーモア」を練って、世に送り出してみた結果が“アレ”だっただけである。
 
吉田戦車先生がヒットした辺り(1990年前後)から、所謂「不条理ギャグ」なるものが大流行して、今でもそれは、根強い人気を誇っている。大袈裟ではなく、これは文化、あるいは技術体系の一つとして、定着していると言ってもいいと思う。
それゆえ、今の時代の30代以下の人間は、“不条理”そのものが「ネタ」になることを知ってしまっている。だから、逆に、天然でカオスな作品を描くのが難しいのである。おかしな状況に対して、どこか客観的になってしまう。
例えば、初めからシュールギャグを看板にしている作品なんかは、ある意味、もの凄く客観的・表面的に“不条理”を描いているわけで、ともすれば、それは読者・視聴者の興醒めを誘う事にもなりかねないわけだ。
 
そんな中、21世紀になっても、天然でちょっとオカシイ事になっている『親子クラブ』。これは貴重な一品だと言える。
「え、何? このアニメ、何を目的にしているの?」という感じが、好事家にはたまらない。
昨年(2008)、急行春山さんがロフトプラスワンで「親子クラブ特集」なる企画をやったらしいが、まぁ、そういう、ロフトプラスワン臭のする人に好かれるアニメなのである…。
ニートのくせに、何かあったらすぐにキレるロンパパ。これは是非一度、早起き(もしくは遅寝)をして、実物を御覧頂きたい。