どうする?ゆうきくん
【出典】…テレビ NHK教育 みてハッスルきいてハッスル(2004-) どうする?ゆうきくん
【説明】…教育番組『みてハッスルきいてハッスル』内のコーナーの一つ
約2分程度の短編アニメ。道徳やコミュニケーションをテーマにしたストーリーになっている。
主人公の田中ゆうきくんが、日常生活でトラブルに遭遇し、それを解決していくという内容。
【独断】…凄い色づかい
登場人物の髪や服装が原色揃いで、まず目に来るアニメである。
そして、ゆうきくんの空気の読めなさが頭に来るアニメである(それが趣旨なんだから仕方ないが)。
道徳やコミュニケーションがテーマで、日常生活の中で「この場面でやっちゃいけないこと」「この場面でやらなければいけないこと」を教えてくれる内容になっている。まずミスケースがあり、そこから「何が悪かったのか」を省みる流れだ。つまり、主人公のゆうきくんは、その役柄として常に視聴者(子供)の反面教師になっているわけである。
…で、まぁとにかく、このゆうきくんが空気を読めない。というか他人の気持ちを解ってあげられない子供なのだ。
例えば、友達のけんたくんから借りた本を誤って破いてしまうのだが、その本をけんたくんに平然と返し、自分は何事もなかったかのように他の本を読み始めるという、『北斗の拳』(1983-1988)に出てくるザコモヒカンのような世紀末で非道でジャイアニズムな行いをしたりする。
他には、けんたくんの消しゴムを無断借用、卓球でダブルスを組んでいたけんたくんに「お前のせいで負けた」と罵倒、けんたくんのテストの点数を大声で言いふらす、けんたくんの家の冷蔵庫を無断で漁る、自分のお気に入りのオモチャに触ろうとしたけんたくんに「お前最低だな!もう帰れ!」と発言、けんたくんとゲームで遊んでいて自分が不利になると「もうやめた」宣言、ジャンケンで負け続けたのに腹を立ててけんたくんを殴る…等々等々。とにかく極悪非道の限りを尽くす。というか、いつも許しているけんたは人間が出来過ぎである。
基本的にゆうきくんには罪悪感がなく、「自分がけんたくんの立場だったらどう感じるかな?」という天の声を聞いて、自らの行いを省みる、というパターンで構成されている。
そもそも『みてハッスルきいてハッスル』は、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、高機能自閉症などの子供たちを支援する目的でつくられた番組ではあるんだが、こういったことは“健常”な大人だって案外欠けていたりするもんだ。
大抵の人間はどこかしらに“鈍い”部分ってのを持っている。
仕事上の立ち回りは素晴らしいのに家族は放りっぱなしだったり、表面上はとても親切なのにどこか冷淡なところがあったり、礼儀正しいのに気配りはできなかったり、…身の回りにも自分自身にも思い当たるフシは結構ある。
問題はそれを自覚しているかどうかで、自覚していた場合は、自分の感覚に「待った」を掛けられるし、仮にその感覚に任せた行動に出るにしても、そこにある程度理性を伴える。つまり、それで誰かに迷惑を掛ける覚悟は最低限あるわけだ。
これが自覚していないと厄介で、気付かぬうちにガンガン信頼を無くしていく。それどころか、「自分は迷惑を掛けていない」と思って行動しているわけだから、他人からそれを指摘された際に腹立たしく感じることすらある。
ゆうきくんの場合は天の声を聞いて即座に反省するわけだが、リアルな人間の場合はなかなかそうもいかないだろう。
私も仕事柄子供の世話をすることが多いんだが、最近、「謝る」「礼を言う」という行為が如何に高度なものか思い知らされている。その子の性格と家庭環境によりけりだが、子供にとっては本当に「謝る」ということ自体が難しいらしいのだ。「礼を言う」なんてのは『怒首領蜂』(1997)のノーコンティニュークリアよりも難しい。小学校高学年くらいでやっとこ、という感じか。
「謝る」「礼を言う」という行為は、自分が相手に対して何をしてしまったのか、自分が相手に何をしてもらったのかをきちんと把握して、適切なリアクションを選択した上での一子相伝の究極奥義なのである。
どうもこういうのは、「悪い事をした」→「叱られる」→「謝るように促される」→「謝る」、というステップを何度も何度も繰り返して、ようやく身に付いていくもののようだ。よくコンビニやスーパーのレジで、子供連れのお母さんが「店員さんにありがとうって言いなさい」なんて子供に礼を促している場面を見かけるが、それもこういった習慣づけの一種なんだろう。
…しかし、子供はともかく、大人になるとこれがなかなか治らなかったりするから厄介なんだよな。
ゆうきくん、正直見ていて腹が立つ事もあるが、こいつは全然他人事じゃない。
でも、とりあえずその緑の髪の毛をなんとかしろ。本当にキャラのデザインがサイケすぎる。
DVD>どうする?ゆうきくん―NHK学校放送みてハッスル・きいてハッスル LD・ (
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