欄外の作者ツッコミ


【出典】…マンガ 欄外の作者ツッコミ
 
【説明】…マンガのコマのわきに、その描写に関するツッコミを作者自身が入れていること
マンガの登場キャラクターの奇異な行動・言動に対するものが多い。キャプションのように確たる説明がなされるわけではなく、作者の独り言が手書きで記されるのが通例である。

 
【独断】…恥ずかしい。だがそれが良い
最近めっきり減った気がする。昔からあったものだとは思うが、ノリとしては80年代が一番多かったんじゃないだろうか。
自分の描いたマンガの内容が気恥ずかしくて、ツッコミを入れている場合もあるが、後々見たとき、そのツッコミ自体がまた恥ずかしかったりするという無間地獄。なんせ、ツッコミ先は自分の描いたマンガである。言い換えれば「人に聞かせるための独り言」だ。そりゃ恥ずかしいわな。
実際、そのマンガの世界に没頭しようとした場合、三次元人である作者の一言というのは読者にとって邪魔にもなりうる。そこはプロとして黙っておくのが正解なのかも知れない。
それを意識してか、最近のマンガはストーリー物、ギャグ物問わず、作中の人物にきっちりとツッコミを入れさせることが多い。作者の代弁を果たしつつ、マンガの中の世界だけで綺麗にボケとツッコミを収める、というのが主流になっている。
…でも案外、私はこの作者の自分ツッコミが結構好きなのだ。
というか、無理して説明的なツッコミ台詞をキャラに喋らせるくらいなら、完全な放りっぱなしにするか、コマのわきに申し訳程度に何か一言書くかして欲しい。その一言が共感できるものであった場合、読者としては結構嬉しかったりするものだ。
しかしまぁ、やはりこれは80年代のノリだろう。萩原一至先生とか、北条司先生とか、那須雪絵先生とか、こんなん多かったような気がする。今だったら若手マンガ家がノリで自分ツッコミとか書いてたら編集者に窘められたりするんだろうか?
同人誌は未だにそういうノリのものが多い。逆説的に考えれば、やはり“プロ的”ではないってことなのかも知れない。

BASTARD!!―暗黒の破壊神 完全版 (Vol.1)

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【追記】…「〆切がキツイ!」
同じく減少傾向にあるのが漫画家の「〆切話」だ。
「マンガの仕事がいかにキツイか」とか「〆切をぶっちぎった」とか、その手のやつである。
昔は単行本のおまけページにグダグタ書いてあることが多かったが、最近は日記漫画家くらいしか〆切をネタにすることもない。
これも上記の自分ツッコミと同じで、“プロ的”な配慮なんだろうか?
確かに自分の仕事の愚痴でしかないので、それを吐露するってのは社会人として見れば甘ったれたことだろう。
しかし、それ自体をちゃんとネタとして昇華してくれれば、こういう“私事”も悪かないと思うのだが。要は野暮にならなければいいだけであって。
ちなみに、同人作家の場合は、未だにこういった〆切話なんかを書いていることが非常に多い。が、正直、「知らねーよ!」という話だろう。多くの人が作業に関わるとはいえ、あくまで同人なんだから自分が好きで作ってるだけだろうに。とはいえ、逆に言えばプロでもないので愚痴をタラタラ書いていてもオールオーケーなわけで、やはりハートマン軍曹の言うように「同人誌の後書きには価値がない」んだわな。
…私は案外読んでしまったりするが。 
【追々記】…手塚治虫
手塚神も自分ツッコミというか、作中に私事を書くことが意外と多い。
というか、手塚先生の場合、仕事の愚痴をそのままキャラクターに言わせてしまったりすることがあるので、ある意味そこらの同人作家よりもヒドイ。
…ノリが完全に昔のオタクなんだよな。いや、勿論、神なんだけど。
きっと、感性の赴くまま描いてらっしゃったのでしょう。
どろろ (1) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)

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【追々々記】…士郎正宗
The自分ツッコミ作家。マンガでもイラスト集でも欄外にむちゃくちゃ解説が書いてある。
この人の場合、実際にその解説やツッコミを見て「ああ、なるほどそういうことか」と思わされるという、かなり特殊な例である。
攻殻機動隊』(1989-2008)のように作中の概念そのものに説明が必要な場合、その解説を台詞でおっつけようとすると無茶苦茶野暮ったくなってしまう。士郎先生のスタイルはやむを得ない形とはいえ一応成功している。(弐瓶勉先生のようにほとんど投げっぱなしにするという手もある)
とはいえ、自分の描いたエロイラストの設定に関して、「詳しいことは分からないが」とか「〜らしい」とか「〜なのだろうか」とか書かれても、「そんなのあんたしか知らねーだろうが!」という話である。
作者本人がツッコミ待ちだ。
攻殻機動隊 (1)    KCデラックス

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