タクティクスオウガ


【ネタ】…ゲーム タクティクスオウガ(1995) 開発・発売:クエス
 
【説明】…架空の世界ゼテギネアのヴァレリア諸島の戦乱を描いたシミュレーションRPG
「オウガ」の名を冠したシリーズとして、『伝説のオウガバトル』に続く二作目として発売された作品だが、オウガバトルサーガ全体としては第1章〜第8章までの構想があり、本作は第7章に位置づけられている。また、前作とのゲームシステムの関連性はほとんどない。
本作では、ヴァレリア諸島でのウォルスタ、ガルガスタン、バクラムの民族紛争による戦乱が、島の少数民族ウォルスタ人の少年デニムの視点から描かれる。マルチストーリー・マルチエンディングを採用している。
ゲームは主人公デニムと彼の率いる部隊を操作し、各地で発生する戦闘イベントなどをクリアすることで進行する。戦闘は、当時としてはまだ珍しいクォータービュー方式のマップで行う。

 
【独断】…リメイク作品『タクティクスオウガ 運命の輪』、2010年11月11日発売予定記念エントリー 
A&Gオタクにとっての1995年といったら、『エヴァンゲリオン』、『クロノ・トリガー』、『同級生2』、そしてこの『タクティクスオウガ』である。
「こんなモノが世に出てきたか!」と、中学生ながらに身を震わせてプレイしていた憶えがある。
当時、私が通っていた学習塾では本作タクティクスが大流行していて、「ゲロっちまえよ」「僕にその手を汚せというのか」「今日の夕飯は合成肉ハンバーグ!」等のタクティクス語が蔓延するほどの人気ぶりだった。
私はいつも塾に大遅刻をしていって、友達みんなとエヴァとタクティクスの話をして、そのまま早退するという日々を送っていた。
 
…私が所属していたクラスは難関校を目指すところだったので、今思うと、完全にみんなのモチベーションを下げに行っていただけのような気がする。
みんながガリガリピキピキ勉強している最中、ドロップアウトしたやつがウェーイと教室に入ってきて、娯楽話だけして去っていくって…もはや嫌がらせのレベルだよな。
「ATフィールド、超強いよ! 核も効かない。マジ強い!」
みんな笑顔で受け答えしてくれていたが、もしかしたら、楽しかったのは私だけだったのかもしれない…
 
えー、無闇に暗くなってしまいました。
これから楽しいゲームの話をさせていただきます。
 
中世ヨーロッパ文化を基調とし、妖精やデミヒューマン、ドラゴンやグリフォンが当たり前のように人と共存する世界。そこで主人公デニムは仲間達と共に剣と魔法を以て敵と戦っていく。
…というと、有り体な子供向け和製西洋ファンタジーを想像してしまいがちだが、本作『タクティクスオウガ』の世界観は、ズバリ言って「シブイ!」です。
魔王的な悪の象徴みたいなやつが出てくるわけではなし(近いヤツはいるが)、勇者さまご一行が全てを解決してくれるわけでもなし。本作はファンタジーの世界を舞台にしながら、人間のエゴが渦巻く民族紛争をひたすら重厚に描いている。
敵方だけでなく、主人公・デニムの所属する勢力も陰謀だらけである。親友(?)のヴァイスはやたらと裏切るし、尊敬していた騎士のランスロットさんはあんなことになってしまうし、ヒロインのカチュアに至ってはむちゃくちゃ性格の悪いヤンデレブラコン鬼姉だ。
ロマンチックとはほど遠い、血にまみれた戦乱がそこにはある。
  
 
主人公である16歳の少年デニムは、ヴァレリア諸島で弾圧を受けている少数民族ウォルスタ人の一人である。
デニムは親友(?)のヴァイスや姉のカチュアらと共に、レジスタンスとして日々ゲリラ活動を行っていた。
そんなある日、島外から来たゼノビアの騎士の一団に出会い、助力を願い、反抗の切っ掛けを得る。
そして、ガルガスタン人に掴まっていたウォルスタの指導者ロンウェー公爵を奪還し、本格的なウォルスタ解放への道を切り開いていく。
 
第一章の序盤がこんな↑感じだ。
うーん、堅い。なんとも堅い話である。
だって、第一章のタイトルが「僕にその手を汚せというのか」だぞ。なんつーゲームだ。
それまでもゲームソフトの中には戦争などの堅いテーマを扱う作品は数多くあったが、それらは大抵史実を元にした作品である。創作のストーリー、ましてファンタジーの世界でこれだけ堅くやっている作品もなかなかない。
しかも、伊達に政治劇が展開されるのではなく、キッチリと彫りの深いストーリーとして描かれている。
覇権を巡って争う三大勢力と、それを機にヴァレリアへの介入を試みる外国組織。人を活かしも殺しもする民族主義。兵器として扱われる魔法や巨大生物。勝利のために手段を選ばない政治屋たち…
ストーリーが進むごとに刻々と変化するリアルな世界情勢に、プレイヤーは自然とのめり込んでしまう。
 
本作は、それだけお堅くガッチリとした話をやりながらも、主人公の選択次第で大きく展開が変わるマルチシナリオシステムを採っている。
マルチシナリオとは言っても選択によって一部の演出がちょろっと変わるだけ…なんてのじゃなく、本当にプレイヤーの選択次第でゲーム内の歴史が変わっていく。
主人公のスタンス自体を決する場面がゲーム中に何度かあり、その大決断の際にルートは分岐する。
そのシナリオルートは3つ。

カオスルート : デニムが理想主義を貫き通す。ある意味ワガママ。
ニュートラルルート : デニムが臨機応変にスタンスを変える。別名日和見ルート。
ロウルート : デニムが勝利のために冷酷になる。ある意味現実主義。

各ルートによって、攻略ステージは元より、デニム一派の立場も、仲間になる人間も、シナリオも、全く違う。
言うまでもなく、どのルートにも手抜きや“ハズレ”はない*1。プレイヤーは、決断相応の道を歩むのみである。
何度も言うが、ルート次第で本当に大きくシナリオが変わるため、タクティクスファンの中でもその好みはかなり分かれる。
私はカオスルート至上主義者なので、ニュートラルとロウをやってみたときは、面白いながらも結構精神的にキツかった。

 
プレイヤーはデニム一派をマップ上で移動させて、目的地にいる敵勢力と戦ってシナリオを進めていく。
戦闘が始まると、クォータービュー画面に切り替わる。そして、敵軍・自軍が各ユニット(個人兵)を操作して戦っていく。
自軍が一度の戦闘に出撃させられるユニットは最大10体。敵の数は、イベントにもよるが4〜20体程度現れる。
本作のクォータービューマップは非常によくできており、箱庭が綺麗に立体的に描かれている。また、高低差、障害物、キャラ同士の方向などが、戦闘に深く関わってくる。
高低差は弓矢などの遠距離武器の射程距離を大きく変える。障害物は遠距離直線攻撃の盾になり、移動の制限役にもなる。キャラ同士の向いている方向は命中・回避率に影響する。
また、キャラクターのクラス(職業・種族)別に、移動距離はもちろん、登れる段差・降りられる段差が定められいる。これが非常にアスレチック的で面白い。
たとえば、砦攻めの場合、敵は初めからかなりの高所にいるので、自軍が登りの苦手なクラスばかり揃えていると大苦戦を強いられることになる。逆に、「フェアリー」や「バルタン」のように翼を持っているクラスは高低差に影響されず移動できるので、高さのあるマップでは大いに活躍する。中にはワープまでできるクラスもあり、彼らは高低差・障害物をお構いなしに移動する。
  
 
ユニットを移動させてアクション(攻撃・魔法など)を取る戦闘シミュレーションというと、単純な敵・味方の二面ターン制のものを想像しがちだが、本作は「ウェイトターンシステム」と呼ばれる独自のシステムを採用している。
そのキャラクターの「AGI(素早さ)」と、装備品・所持品などの「重量」によって、次の行動までの時間が決まるのである。この場合、敵・味方の区別はなく、早い者から順番に行動できる。
キャラクターはクラス別にウェイト(待ち時間)の基準値が定められており、レベルアップによるAGIの上昇や装備の軽量化などによってこのウェイトを減らしていける。
また、移動だけでアクションはしない・アクションだけで移動はしないのであれば、次のウェイトを75%に減らすことができる。全く何もしなければ半分の50%。移動した上で何かアクションを起こせば次のウェイトは100%になる。
 
拙い説明でちょっと解りづらいかも知れないが、このウェイトターンシステムが本作の戦闘部分のキモになる。
序盤こそ、みんな400〜500のウェイト値で、キャラごとに「なんかおそいなー」「わりとはやいなー」くらいの感じしか受けないのだが、これが終盤になると育て方次第で非常に大きな差が出てくるのだ。
例えば、ウェイト値50のキャラAとウェイト値300のキャラBが戦った場合を想定して欲しい。
Bがボエーっと突っ立っている間、Aは間合いを詰めて弓矢で攻撃。そして、移動をしないのであればこの後さらに5回弓矢を撃てることになる。Bは自分が動く頃にはサボテンのようになっている。
…Bの側でリアルにこれを想像すると、相手がザ・ワールドを使っているような感じだろう。
 
もちろん、AGIが上がりやすいクラスはSTR(攻撃力)やVIT(防御力)が上がりにくいという弊害もあるのだが、このゲームではステータスアップカードというのをランダムに敵が落としてくれるので、それで一応無制限に補強ができるのだ。
「じゃあAGIも補強できるんじゃね?」と思いきや、なぜかAGIだけはステータスアップカードが存在しない。AGIは基本的にレベルアップで上げるしかないのである。なので、最強厨は自然とAGI至上主義者になる。
かといって、もちろん早いだけでは使い物にならないので、育て方には頭を悩ませる。

 
シリアスで重厚に展開されるストーリーに、ガッチリキッチリ作られたシミュレーション部分。
ある意味、堅すぎて取っつきが悪そうな風に思えなくもないが、ゲームとしての根本的な水準が極めて高いので、案外、子供がやっても自然と楽しめてしまったりする。
 
それこそ、ぶっちゃけ、キャラものの要素もあるので、キャラクターだけに注目するってのもアリだろう。
ミスター天の邪鬼…ヴァイス・ボゼッグ!
石化職人…ハボリム・ヴァンダム!
スーパーストーカー…ウォーレン・ムーン!
人間の友達をつくれ…ガンプ・バックスタイン!
ドスケベホワイトナイト…ギルダス・W・バーン!
などなど、魅力的なキャラクターが多数居る。
 
…えっ? 萌えも欲しい?
大丈夫でございますよぉ〜。当店、萌える女性キャラクターも多数取り揃えておりますからねぇ〜。
カオスルートならフォリナー四姉妹という美人姉妹が全員仲間にできますぞぉ〜(Nルートも可能)。
長女のセリエは過激派ゲリラ組織の長で、次女のシェリーは実父を国に売る権力主義者で、三女のシスティーナは冴えない彼氏持ちで、四女のオリビアはデニムに傷物にされたことを脅しの道具として使ってくるストーカー。そんなステキな四姉妹でございます。
他にも、女性ながらに物理攻撃最強候補のアロセール・ダーニャや、人間よりカボチャが好きな美人魔女のデネブ・ローブなどがいる。
これは萌える!
…俺がそう思うからそうなんだよ。俺ん中ではな。
  
 
そして何より、本作の象徴的人物が、メインヒロインのカチュア・パウエルである。主人公デニムの姉だ。
とにかく、この女が最高に性格が悪い。
まず、デニム以外の人間全てに冷たい。
幼馴染みであるヴァイスにも「弟はあなたみたいに血の好きな男じゃないのよ」とか「あなたみたいに、我を通すだけの能無しじゃないの。私は」とか言ったりする。ウォルスタ解放に協力してくれる聖騎士ランスロット一団にも「おべっかを使っている」だけだったりする。それどころか、デニムと自分の幸せのためだったら父の仇討ちすらどうでも良かったりする。
とにかく、デニムと自分自身が幸せに暮らせればそれでいいのであって、紆余曲折はあるがその姿勢は最終章まで変わらない。
まぁ、もう、万夫不当のブラコンぶりで、デニムに対する依存度がハンパではなく、「(デニムが)手に入らないのなら…いっそ…」というとんでもない発言までしている。
その大好きなはずのデニムに対しても、自分の思い通りにならないと「何か用? 英雄さん」と皮肉を言い、「あなたは私より戦いを選んだ!」などと犬も食わない夫婦喧嘩のような発言を平気でする。
カチュアの原理は「私が何よりも愛しているデニムは、何よりも優先して私を愛さなければならない」なのである。
カチュアは初期メンバーだが、一度離脱して、再度仲間にできる機会がある。この際、カチュアを説得するために、デニムはとんでもないセリフを言わされることになってしまう(選択次第では説得に失敗する)。
 
で、そんなクソ女カチュアだが、正直なところ私は彼女が大好きである。
なんだかんだ言って、カチュアには姉萌えの要素がある。甲斐甲斐しくデニムの面倒を見てきた事は間違いない。それでいて、誰よりもデニムに甘える年下的な可愛らしさもある。そのくせ、甘え方が下手過ぎて結果ツンデレになってしまっている。おまけに、その行動原理やデニムへの執着心はヤンデレという他ない。
人物像をインスタントな言葉で括るのは限界があるが、見ようによってはスーパーハイブリッドな神レベルの萌えキャラクターとも言えるだろう。
ゲーム発売当時、カチュアを嫌っているプレイヤーが数多くいたが、今改めて再評価されるべきだと思う。…まぁクソ女には違いないが。
  
 
どうだろうか。このエントリーが『タクティクスオウガ 運命の輪』の予習になっていれば幸いだが…あまりその自信もない。
まだまだ語り尽くせない粋な部分も沢山あるのだが、それらを全部書いていると仕事を一週間ほど休まなければならなくなってしまう。それだけガチムチに作り込まれた作品なのだ。
攻略のコツを掴んだ上である程度やり込まないと、その真髄がなかなか味わえない作品でもある。もし購入された場合は腰を据えてプレイして欲しい。
 
秋の夜長にヤンデレ鬼姉とヴァレリア制覇。いいもんじゃないでしょうか。
 
おわり

 
【追記】…攻略本
昔出ていたSFC版の公式ガイドブックが非常に充実した内容で面白かった。
特に秀逸だったのがインデックス。
ゲーム内の様々な用語を解説してあるのだが、その文章が記者の主観とネタが多分に混じっていて非常に面白い内容になっていたのである。プレイヤーからもこのインデックスは大好評。
このブログも、始めた当初は、そのインデックスのような形態を取りたいなーと思っていて、その名残で【出典】【説明】【独断】など、堅苦しく項目が分けられている。
 
【追々記】…エンディング
…ネタバレを避けてこれを言うのが非常に難しい。
メインキャラが全員生き残ってグッドエンディングになったとき、カチュアはデニムのエンディングでの行動を素直に受け入れたのだろうか。
このゲームの戦乱の一因に王族の愛憎劇があるのだが、なんかそれに近いことがこの後にもまた起こるのではないかという不安がよぎってしまう。
もうちょっと具体的に言うと…オリビアは大丈夫なのだろうか。
 
おしまい

*1:それがそのプレイヤーの望んだ結末になるとは限らないが