AZEL -パンツァードラグーン RPG


【ネタ】…ゲーム AZEL -パンツァードラグーン RPG(1998) 開発元:チームアンドロメダ 発売元:SEGA
 
【説明】…セガ製作のゲーム『パンツァードラグーン』シリーズの第3作であり、シリーズ唯一のRPG作品
高度な文明が滅び、残されたわずかな人類が、自らの生み出した攻性生物たちにおびやかされながら暮らしていた時代。 かつての科学文明を発掘して攻性生物を駆逐しようとする帝国は、領土拡大のため諸国との戦争に明け暮れていた。
少年エッジは、帝国の遺跡発掘現場で、警備の傭兵として、退屈ながらも平穏な毎日を送っていた。
しかし、ある日、発掘所内部から純血種の攻性生物が現れ暴走する。それと同時に、駆けつけてきた友軍であるはずの帝国軍クレイメン艦隊が発掘所を襲撃。
エッジは育ての親でもあった傭兵仲間たちを皆殺しにされ、自身も殺されかけるが、間一髪のところをドラゴンによって救われる。
ただ一人生き残ったエッジは傭兵仲間の復讐を誓い、ドラゴンに乗ってクレイメンを追うが…
3Dシューティングゲームである『パンツァードラグーン』シリーズだったが、本作のみエンカウント式RPG作品になっている。
ワールドマップから地域を選択するとその探索ゾーンに入ることができる。
探索ゾーンでは、ドラゴンに騎乗し敵が出現するゾーンと、街などを主人公「エッジ」が単身で探索をするゾーンの二種類がある。
戦闘システムは基本的にファイナルファンタジーシリーズの「アクティブタイムバトル」を踏襲・模倣した物であるが、ここに本作独自の位置取りシステムが加わることで、独特の楽しみを得ることに成功している。
時系列、世界設定は、他のシリーズ作品の直接的な続編になっている。
2010-08-07「パンツァードラグーン ツヴァイ (-Zwei)」

 
【独断】…『ヒックとドラゴン』公開記念エントリー
我々の世代の男はドラゴンに対する憧れが半端ではない。
ダンジョンズ&ドラゴンズ』を初めとして、ファンタジーの象徴であり王の位置に座するのはやはりドラゴンなのである。
ファイアーエムブレム』のラスボスは、暗黒竜だ。『ドラゴンボール』で何でも願いを叶えてくれるのは、神龍(シェンロン)だ。邪王炎殺拳最強の必殺技は…そう、黒龍波だ。キミの家のお姉さんも自室で一人、邪王炎殺拳の練習をしていたはずだ。
元来、ちょっと変わった女神だったはずのティアマトも、上記『D&D』と某『真・女神転生』のせいで、いつの間にかすっかりドラゴン扱いされている。それだけみんなドラゴンが好きなのだ。
私も、某RHAPSODYの歌のように、ドラゴンの飛び交う緑なす渓谷のためエメラルドソードを探す旅に出たい…と、常々考えている。そ・れ・だ・け、ドラゴンが好きなのだ。『やっぱり猫が好き』のノリで「やっぱり竜が好き」なのだ。

 
そんな竜好きにはたまらない…本当にどストライクな逸品が、本作『AZEL -パンツァードラグーン RPG』である。
主人公の少年「エッジ」が飛竜の背に乗り、空を駆け、巨大生物や空中戦艦を相手に戦い抜く…という、エンカウント型のロールプレイングゲームだ。
幻想的な世界、壮大な音楽、3D空間を優雅に舞うドラゴン、常軌を逸する巨大な敵、戦術性に富む戦闘システム…本当によくぞ創ってくださいましたと言いたくなるようなソフトである。
 
…なんか、『パンツァードラグーン ツヴァイ (-Zwei)』のエントリーのときと言っていることが酷似しているような気もするが…

 
物語の時系列としては、『パンツァードラグーン ツヴァイ』→『パンツァードラグーン』→『アゼル -パンツァードラグーン RPG』の順番で、本作『アゼル』はパンツァードラグーンシリーズの総決算的な内容になっている。
これまでわからなかった、攻性生物の発生源、古代文明の謎、ドラゴンの存在意義、世界に住む人々の生活風景などが、本作では全て明かされている。
シリーズ3作目にして、初めてパンツァードラグーンの世界が具体的な形で描かれている。
 
もの凄く乱暴な説明をすると、パンツァードラグーンの世界観は、アニメ『風の谷のナウシカ』(1984)に近い。もちろん、具体的な設定や描写は全く違うものであるが、「ナウシカの世界から腐海を取ったような感じ」と言えば、まぁ、わかりやすいかも知れない。
人間の力ではどうにもならないようなでかくて強い生き物(攻性生物)たちが世界中にのさばっていて、人間はそいつらと戦いながら自らの生活圏を確保し、細々と生活している。古代文明の兵器を用いればその生き物たちをなんとか駆逐できるが、その兵器自体を巡って人間同士の争いも絶えない…という有様。
帝国を除けば、人々は基本的に都市と言えるような大規模な拠点は持たず(持っても攻性生物に滅ぼされるケースが多い)、小規模な村やキャラバンを編制して生活している。ゲーム内では、牧畜や農業などをしている様子がうかがえる。また、自らの天敵である攻性生物を狩り、食料や武器、日用品、薬剤など、様々な用途で生活の糧としている。
 
アゼル以前の作品では、ツヴァイの冒頭に主人公の居た村の様子が少し描かれるだけで、パンツァードラグーンの世界の生活様式は脳内補完任せだったが、今作ではそういった部分もかなり具体的に掘り下げてある。
凄いのが、探索中に様々な人や物をロックできるのだが、エッジ主観でそれらの解説を事細かに行ってくれるのである。
店に吊してある道具をロックすると「攻性生物の硬い外皮を加工した物のようだ。かなり使い込んである」等々の文面が一々表示される。焚き火の燃料、そこら辺に生えている木、人の格好、全部がきちんと解説される。
 
 
また、シリーズ共通して、ゲーム内の架空言語である「パンツァー語」が用いられている。
本作はメインキャラからモブキャラまでフルボイスで、基本的には日本語で物語が進行していくが、一部ムービーシーンではこのパンツァー語でナレーションや会話が行われる。
そして、幕間のイベントデモのほとんどはリアルタイムポリゴンで展開される。
用意されたムービーだけで繋ぐのではなく、プレイヤーの分身であるエッジ、そして相棒であるドラゴンが、常に“そこに居る”状態でゲームが進行していく。
これらの徹底した配慮は、プレイヤーに「パンツァードラグーンの世界」を非常にリアルに感じさせてくれる。そして、それはこのゲームのエンディングにも直結するのだが…これはネタバレになるので避けときます。
 
主人公エッジはドラゴンにまたがって世界中を飛び回るわけだ。まぁ〜これがステキ。
ゲーム中、猥雑とした都市は出てこないのだけど、その代わり、大規模な地下砂漠やら海に浮かぶ遺跡やらを探索する。
大過ぎる自然と、巨大過ぎる遺跡群、そこに棲む巨大過ぎる生物たち。
ドラクエの旅が「旅情」と「経験」であるとするなら、アゼルの旅は純然たる「冒険」であり、未知への好奇心をひたすらに掻き立ててくれる。
一応、主人公エッジの旅の目的は復讐であったり使命であったりするのだが、プレイヤーからすると、一つ一つのステージがグー…っと心に染み入ってしまう。
 
  
戦闘システムに目を向けると、本作はかなり独特な仕様になっている。
まずセミリアルタイムバトルである。自分も敵も行動ゲージを持っており(敵は非表示)、時間とともにゲージが貯まっていく。そして、そのゲージが貯まった数に応じて行動できる。
最大3ゲージまで貯められて、通常攻撃のショットやレーザー、アイテム使用は1ゲージ消費。バーサクと言われるドラゴンの様々な特殊技能を使う際には2ゲージ消費。一部の特殊なバーサクは3ゲージ消費する(バーサクは別途バーサクポイント=BPも消費する)。
そして、これが独特なのだが、戦闘中、自機であるドラゴンはずっと空を飛んでおり、敵を中心に旋回できるのだ。つまり、敵の前方・左側面・後方・右側面…と、常に移動ができるのである。
敵によって、強力な攻撃が出せる方向が決まっており、プレイヤーはその方向を避けて、安全な位置取りをしながら戦っていく。そして、敵の弱点となる向きから攻撃すると大ダメージを与えられる。
 
この位置取り要素が、セミリアルタイムバトルと非常に上手く噛み合っていて面白い。
敵の弱点がむき出しになる方向は、得てして敵も強力な攻撃を放てるようになっている。よって、比較的弱い攻撃が来る方向でわざと攻撃を受けて、ゲージが貯まった瞬間に敵の弱点に回り込んで猛反撃!…とか
あえて危険な方向に待機して、敵に必殺技を放つ形態を取らせてから、一気に別方向に逃げて必殺技を無駄撃ちさせる!…とか
そういった戦術が幅広く行える。
敵の特徴さえ掴んでいれば、パズル感覚でノーダメージ戦闘を繰り返せる。
逆に、一発勝負のボス戦では、敵ボスの行動パターンを早めに掴んでおかないと、ダメージを与えられないまま、いいように必殺技をぶち込まれてしまう(パターンさえ憶えてしまうと、ボス戦でもほぼノーダメージでクリアできたりする)。
さすが、元々シューティングゲームなだけあって、動かす快感は常に忘れていない。なおかつ、あくまでRPGなので反射神経的なサムシングは要らない。誰にでもできて、しかも面白い。
 
で、ボス戦がまた迫力あり、哀愁あり、燃える展開ありで、いいんだ、これが。
攻性生物のボスは、でかさと、突拍子もない攻撃に驚かされる。帝国軍やクレイメン艦隊のボスは、みんなで戦艦を運用している軍隊っぽさがイイ。ライバルのアトルムドラゴン戦は、アトルムに騎乗するヒロイン・アゼルのクールな振る舞いと、カッコイイ必殺技に惚れてしまう。
ボスの一体一体に「なんだこいつは!?」という驚きを覚える。

 
物語がある程度進むと、自機のドラゴンは能力・形態変化が行えるようになる。
それぞれのパラメーターの比重を自分で振り分け、その能力に応じた姿に変形する。これはキャンプ、移動中、戦闘中いつでも行える。戦闘中に形態変化を行う場合は1ゲージ消費する。
・ 攻撃型 … レーザーの攻撃力重視。バーサクの威力は落ちる。レベルアップするとレーザーの威力が大きく上がる。
・ 防御型 … 耐久力重視。旋回スピードは落ちる。レベルアップするとHPが大きく上がる。
・ 機動型 … 旋回スピード重視。耐久力は落ちる。レベルアップするとエッジのショットの威力が大きく上がる。
・ 心技型 … バーサクの威力重視。レーザーの攻撃力は落ちる。レベルアップするとBPが大きく上がる。
攻撃を上げると心技が下がり、防御を上げると機動が下がる。逆も然り。
普段は機動型にして、避けようのない攻撃が来る際には防御型に変える。数の多い敵が現れたら一時的に心技型にして、バーサクで一網打尽にする。…といった戦法も可能。
(ただし、最強厨はずっと「攻撃」「機動」をMAXの状態にし続けるのが常道)
 
 
ツヴァイと同じく、ドラゴンは物語が進むごとに、ベースの形状が大きく力強くなっていく。
しかし、どれだけ厳つくなっても、キャンプを張っているときは愛玩動物のように大人しく、エッジになついている。極攻撃機動型にして、戦闘機のような風貌になっているドラゴンでも、エッジが触ると「クォー」と鳴いて喜ぶ。
 
ストーリーは、相変わらず、「少年とドラゴンの孤独な旅」なのだが、本作はRPGなだけあって、様々な人物が絡んでくる。
帝国やクレイメンの巨大な陰謀もあれば、エッジの協力者もいるし、淡い恋物語もあったりする。魅力的なライバル…というか、不思議なヒロインもいる。
声優陣の熱演も素晴らしく、パンツァードラグーンの世界が彫り深く描かれている。

 
今年、2010年になってから最初からやり直してみたのだが、いやー、今やっても凄く面白い。
グラフィックはさすがに今見るとショボかろうと思っていたけど、当時なりに綺麗に見える工夫が凝らされていて、案外全然いけるレベルだった。
未だにコアなファンを数多く抱えているようで、中には「1年に1回必ず最初からやってクリアする」という人もいるのだそうだ。
 
幻想的な世界で、竜の背に乗り大空を飛ぶ…
そんな少年の夢に真正面から応えてくれるソフトです。
もしよろしければ、エミュなどではなく、中古ソフトを探してセガサターン実機でプレイして欲しい。御自宅の物置で埃をかぶったサターンも喜ぶだろう。
… 
…って、えっ!? サターンを持っていないだと!?
じゃあ、あんた、一体何で『ホーンテッドカジノ』をやるというのだ!?
セガサターン、シロ!
 
おわり

AZEL パンツァードラグーンRPG

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