バキ外伝 疵面-スカーフェイス-
【ネタ】…マンガ バキ外伝 疵面-スカーフェイス-(2005-) 原作:板垣恵介、作画:山内雪奈生
【説明】…格闘マンガ『グラップラー刃牙』シリーズに登場する喧嘩師・花山薫を主人公としたスピンオフ作品
刃牙シリーズ本編で語られることのないヤクザとしての花山の姿が描かれている。本編との時間軸は不明だが、第12撃「息子」以降、花山の頬にスペックから受けた傷跡(銃弾を口に入れられ、爆発させられた痕)がある。
休載気味の状況が続き、『チャンピオンRED』2008年4月号にて、ストーリーが途中のまま連載終了と発表されたが、その後2008年の『週刊少年チャンピオン』36+37合併号にて番外編が掲載。その同年秋頃の連載再開も発表されたが延期され、2009年6号と7号に再び番外編が掲載、引き続き『週刊少年チャンピオン』7号から『チャンピオンRED』で行われていた本編の続きが再開された。しかし、2009年15号(3月発売)にて、クライマックスの途中にも関わらず、突然、第二部完の告知がされ、またもや連載が中断。当時の作者コメントは「先週の続きは、まだ考えています。いくつか描きためるつもり。す…すいません。」。2009年秋に連載再開とのアオリがあったが、2009年4+5号(12月24日発売)と2010年21+22号(4月22日)に読み切りの番外編が掲載されるも、2011年2月の時点において連載は再開されていない。
2011年2月現在、単行本はチャンピオンREDコミックスとして5巻まで刊行されている。
【独断】…花山組構成員 田中KEN(17)が登場するたびに笑ってしまう
さすがに3週間はない。
いくら刃牙に脳味噌が浸食されたとはいえ、さすがに3週間に渡って刃牙の話題しかないのはあり得ないだろう。そこまで中毒になってしまったとしたら、それはもう、病院だよゥッッ!!…という話だ。
というわけで、今回は刃牙の話ではありません。
花山薫の話です。
花山薫といえば、バキシリーズの中でも屈指の人気キャラクターだ。
身長191cm、体重166kg。19歳でありながら花山組二代目組長にして*1、最強の喧嘩師としてその名を馳せる。
五百円硬貨を指でひん曲げ、重ねたトランプの一部だけを千切るほどの握力を誇る。策略や駆け引きを一切用いず、強靭な肉体と圧倒的なパワーのみで闘いに臨む、非武装・非鍛錬の美学を持ったステゴロ(ステ=素手、ゴロ=喧嘩)の天才。
様々なファイターが登場する刃牙シリーズにおいても、花山の存在は異彩を放っている。
武道や格闘技はもちろんのこと、およそ鍛錬と言えるようなものは一切行わない。生のままに強いのだから、生のままに生き、生のままに闘う。
かといって、ただの本能だけの野性とも違う。己が一分を通すためには勝敗も生死も問わない、もはや信仰にも近い喧嘩意地(ゴロメンツ)を持ち合わせている。その佇まい、その生き様こそが任侠そのものと言えるような男である。
バキシリーズの中で、花山が持ち味を出し切った闘いは全てが名勝負だと言われている。
そんな花山にスポットを当てたスピンオフ作品が、本作『バキ外伝 疵面-スカーフェイス-』なのだ。
花山がバキ本編に出てくるときは、格闘家と闘ったり、死刑囚と闘ったり、原始人を足止めしたり、どれも本業であるヤクザとはかけ離れたことをしている。
また、バキ本編に出てくる登場人物の大半は格闘家であり、彼らが日夜鍛錬に勤しんでいる姿は頻繁に描かれるし想像もしやすいが、鍛錬をしない花山の日常というのは一体どういうものなのか、これはかなり謎な部分がある。
本作スカーフェイスでは、そういった花山の本業での姿、日常生活での姿が描かれている。
…描かれている、とは言ったものの、花山は基本何もしない。
酒をかっ喰らう。行きつけの定食屋でオムライスを食べる。釣りをする。街中をうろうろして野菜をもらう。チャンピオンを読む。電車の中で昼寝をする。茶室を壊して怒られる。メイド喫茶でアイスクリームソーダを食べる…
これといって実務的なヤクザ稼業をやっている風はないし、組員を取り仕切って何かをしているわけでもない。やる夫並に本当に何もしない。ただただ、行く先々で圧倒的な存在感を放ち、周囲の人々を困惑させる。
強者なのだからいざというときにその力を発揮すればいい。強者だからこそ、花山は努めて何もしないのである。
当然、花山薫という非日常的な存在が送る日常というのがただの安穏で済むはずもない。痛快・豪快なエピソードが次々と巻き起こる。
花山に復讐を誓う金バッジ狩りとの喧嘩、巨大ホホジロザメとの激闘、病床に伏す母親とのやり取り、怪力男レックスとの奇妙な友情…*2
ネタバレを避けるために具体的なことは書かないが、本作は、とにかく花山薫を格好良く、ひたすらに格好良く描いている。
多分、どれも女性が見たら「ば〜っかじゃねえの!?」と言いたくなるような力任せの話ばかりだろう。しかしそこはそれ、男が惚れる男・花山薫の話である。男性が見たらその有様に憧憬を抱かずにはいられない。
エピソード一つ一つのシメもやたらと粋で、BGMに「Get Wild」や「タイガー&ドラゴン」でもかかってきそうな雰囲気だ。
花山のキャラクターもバキ本編から若干変更が加えられ、より無口で大物然とした感じになっている。ヴィジュアル的にもかなり二枚目。作画の山内先生は原作者の板垣先生よりも花山が好きなのではないかと思う*3。
また、打たれ強さやパワーも、バキ本編で登場したときよりさらに凄まじいものになっている。もはやゲーム『バイオ・ハザード』に出てくるタイラントのレベル。
ビルの壁をタックルで貫通、ハンドガンの銃撃程度ならば喰らっても出血するだけでほぼノーダメージ(効いてはいるはず)、武装兵も全て一撃の下に葬り去り、刑務所の分厚い正門もストレート一閃でぶち破る。
もう、喧嘩日本一とかそんなレベルではなく、その身体能力たるや人の領域ではなくなっている。この花山だったら愚地克己の通常マッハパンチも完全に耐えきるだろう。
本作スカーフェイスは、その性質上、花山がバキ本編に出てくる格闘家たちと闘う事はない*4。
「ならば花山にとって強敵となる者はいないのではないか?」と思われるかも知れないが、本作にもラスボスに相当するやつは出てくる。その名も「グランドマスター」。
花山組が属する藤木組、その藤木組の敵対組織である源王会の8代目会長の座に就いているのが、史上最強の暗殺者と呼ばれているグランドマスターなのだ。
こいつが妙に強い上にやたらと残虐で、ありとあらゆる反則技を使ってくる。そんなグランドマスターを相手にしても、やはり真っ向から喧嘩を仕掛けていく花山。さあどうなるッッ!
…さあどうなるッッ!…というところで、残念ながら、本作は長らくの休止状態に入ってしまっている。
元々連載自体が非常に不安定で、休載のときもあれば、数ページしか掲載されないときもよくあった。特にグランドマスター編に入ってからはちょろっと載って数ヶ月休載というのを繰り返す有様。なんとか少しずつ続きが描かれたものの、佳境の「佳」の字に入ったあたりでほぼ完全にストップ。2010年の4月に数ページの番外編が載ったのを最後にかれこれ10ヶ月ほど進展がない。
しかも、休載理由の説明がないものだから非難囂々。ゴシップ的なものも含めて様々な噂が飛び交ったままになっている。
私は今年(2011年)に入ってから本作を単行本で一気読みしたのだが、リアルタイムで掲載を待っている読者からしたら、これはたまったものではないだろう。
ちなみに、私が単行本を買いに行ったまんが王という本屋の店員さんは、「スカーフェイスっていうマンガ探しているんですけど」と私が訊いたら、「すみません、スカーフェイスもなかなか新巻が出なくて…申し訳ありません」と、なぜかいきなりこちらに謝ってきた。うーん、少なくとも本屋さんが謝る事ではない。
私の場合は新参のファンなので、純粋に気長に、続きを待つばかりだ。
バキに登場する格闘家たちが飽くことなく上へ上へと目指していくのに対し、花山はその場その場の喧嘩に己の意地の全てを懸ける。
一つの勝負を終えても「道半ば」の格闘家たちと違い、花山は喧嘩に明日を見ていない。強者として生のままに生き、ただ闘いを受け入れる。そして一つの喧嘩を終えれば、雄然かつ颯爽と去っていく。この清涼感はこれまでのバキシリーズにはなかったものだ。
全国8780億の花山ファンのみならず、バキシリーズ未見の方にも読んでみて欲しいと思う作品だ。
『バキ外伝 疵面-スカーフェイス-』、貴方の本棚にある『腐女子っス!』の横に、是非。
- 作者: 板垣恵介,山内雪奈生
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2005/08/20
- メディア: コミック
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【追記】…時系列(以下、微ネタバレあります)
さて、どうせ続きが描かれることもないだろうし(ヒドイ)、現在出ている単行本全5巻をもう少し洗っていきたい。
グランドマスター編に入るまでは、時系列もバラバラにエピソードが描かれていたのだが、それらの話がバキ本編においてどのあたりに起きた出来事なのかをちょっと検証してみよう。
花山の紹介だけで終わる回や、バキ本編で描かれたエピソードをそのままなぞる回などは省いていきます。
スカーフェイス、および、バキ本編を御存知ない方にはサッパリな話ですが、もし気になった場合は本編も併せて御覧になってみて下さい。
第2撃…挑戦状
花山がヒロシに対して「あれから…2度敗けてる」と語っている。これは刃牙戦とその直後の勇次郎戦のことだろう。
そして、ヒロシが中学・高校の思い出話をしているところから察するに、互いに高校卒業相当の年齢ではあるようだ。
つまり、花山も18か19歳といったところ。最大トーナメントの直前くらいのエピソードと思われる。
第3撃…花火
不思議回。
ずばり、年月日で言えば花山薫の16歳の誕生日の話だ。
まず理屈に合わせてみよう。花山が刃牙や勇次郎と闘ったのが15歳。花山のお袋さんが亡くなったのは、刃牙のガイア戦から勇次郎戦までの間。
つまり、理屈で言えば、勇次郎に両腕両脚を解放骨折させられてから、刃牙に再会するまでの数ヶ月の間に起きたエピソードであるはずなのだ。は・ず・な・の・だ。
しかし、この話の花山は勇次郎にやられたようなダメージは全く見えずベストすぎるコンディション*5。さらに、警官のおっさんの話だと、花山がヤクザの組を潰したことによって捕まったようにも聞こえる。それは刃牙戦の前の話のはずだ。おまけに最後のコマの「花山薫 16歳 激動の年!!」というのが、16歳時に刃牙や勇次郎と闘ったり母親が亡くなったように読める。
そして何より、花山の顔に勇次郎にやられたドスの傷跡がないッッッ!!! …これは一体…
つまり作者(板垣・山内両氏)は、花山と刃牙が出会う前のエピソードとしてこの回を描いたのである。
バキ本編では刃牙との出会いが15歳時のエピソードだったはずなのだが、スカーフェイスではそれが16歳時となっているわけだ。まぁ、それだけといえばそれだけのことだけど、結構紛らわしい。
…ちなみに、オマケの謎として、この回には花山組のメンバーの中に田中KEN(17)と思しき人物が描かれている。
花山より二つ年下の彼は、当時間違いなく中学生のはずだ。確かにヤクザについて回る中学生はまれにいるが、どうも中学生という風貌にも見えない。他人のそら似だろうか。それとも田中KEN(14)本人なのだろうか。
第4撃…一からッ!!
特に時系列を限定させるものはない。花山に頬の傷がないことから、スペック戦の前であるということしか分からない。
第5撃…T-レックス 〜 第9撃…本当の拳
これは期間がむちゃくちゃ限定されるエピソードだ。
花山の顔にスペックにやられた傷はない。しかし、レックスの存在を語る猪狩の顔にはシコルスキーにやられた傷がある。
もし徳川・猪狩の会話と、花山・レックスの出会いに時系列の入れ違いがないのだとすれば、『バキ』の4巻、27話と28話の間に起きた話だということに確定する。
地下闘技場戦士5人と最凶死刑囚5人が顔を合わせた日から、刃牙が梢江とデートする日までの間。
そうなると、花山は死刑囚に会ってから、レックス→スペックと数日の間に連戦していたことになる。
第10撃…巨拳、地球を釣る!! 〜 第11撃…海中勝負
これもいつの話なのかいまいち分からない。スペック戦での傷はなし。レックスと会う前の話なのかもしれない。
もし、第9撃のあとの話だとしたら、花山は超短期間の間に、レックス→ホホジロザメ→スペックと、怪物三連戦をしていたことになる。
さすがに死刑囚と顔を合わせてから釣りには出かけないとは思うが…
そもそも作者も細かい時系列なんてどうでもいいと思っているだろうし。
第12撃以降
グランドマスター編に入っていくところだ。ここからスペック戦での頬の傷ができる。
ここからはいつの話になるのか特定は不可能だが、バキ本編で花山が長らく登場していない期間があったので、その間の話になるであろうと思われる。
『バキ』の中国大擂台賽編から『範馬刃牙』のピクル編が始まるまでの間。存分に時間はある。
ピクル編以降と考えがたいのは、スカーフェイスのグランドマスター編が始まったときに、そもそもバキ本編にはまだピクルが出てきていなかったからである。単純にそれだけで、確たる証拠はない。
ちなみに「花山薫撃たれる」の報を電話で聞いたときの愚地克己は左手で受話器を持っている。俺マッハを使って粉砕したのは右腕なので、このシーンでもピクル編以前以後かは判断できない。
おしまい
範馬刃牙 RDF 強きを求めし者 花山薫 (ノンスケール PVC塗装済み完成品)
- 出版社/メーカー: スパイダーウェブ
- 発売日: 2011/01/31
- メディア: おもちゃ&ホビー
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