『グラップラー刃牙』シリーズ 好きな登場人物ベスト10!


【ネタ】…漫画 グラップラー刃牙(1991-1999) バキ(1999-2005) 範馬刃牙(2005-) 板垣恵介
 
【説明】…地下闘技場の王者・範馬刃牙が、地上最強の生物と謳われる父・範馬勇次郎の打倒を目指す格闘漫画
地下闘技場の最年少チャンピオン範馬刃牙と、刃牙の父で地上最強の生物と謳われる範馬勇次郎を中心とし、様々な格闘家との闘いが織り成す長編格闘ドラマ。通常の格闘技の試合のみならず、色々な条件下での死闘が数多く描かれている。
登場するほとんどの格闘家は「地上最強」を目指して闘い続けているが、主人公の刃牙だけはあくまで勇次郎を超える事のみを目標としており「地上最強」を目指してはいない。
多くの描写を割いて相当の強者と演出されたキャラクターをあっさり負けさせる意外性、大ゴマや見開きを多用し迫力を持たせた構図、叫び声や悲鳴を表すセリフの最後に「ッ」、「ッッ」といった文字を使用するのが特徴。

 
【独断】…以下ネタバレ多数あります
先日、グラップラー刃牙シリーズを一気買いして読み直してみたのだが、いやー、改めて見るとこれが非常に面白い。
どうにも刃牙シリーズというと、物や人が派手にぶっ壊れるド迫力の戦闘描写や、ネタにも思える超常的な格闘理論なんかに目が行きがちだが(実際それが面白い)、それらの過剰搭載したエンタメを支えるバックボーンとして、作者の格闘技に対する凄まじいまでの造詣の深さが確かに存在するのである。
技のフォームや運動連鎖といったヴィジュアル面が大袈裟ながらもしっかりしていて、その技のルーツとなる武道や格闘技やファイトスタイルに対する考察も偏執的なまでに行われている。さらにはその格闘の根本に当たる勝負論・武道論・護身論・野性・喧嘩意地(ゴロメンツ)といった意義までもが深く深く掘り下げて考えられている。
また、本作では、スポーツ科学や競技格闘の技術が有効であると知り尽くしながら、格闘家がそれらに依ることを軟弱と斬り捨てている。
様々な格闘技が“スポーツ”として昇華されるまでにそぎ落としてきた原始的で野蛮で残酷な技や力こそが、闘争の本質である…という信念を基にしているためだ。
本作はまさに格闘漫画のアルティメットバーリトゥーダー(何それ)と言えるだろう。
 
2011年現在総連載期間20年に及ぶ本作には、これまで様々な魅力的な格闘家たちが登場してきた。
今回のエントリーでは、それらのキャラの中で私が好きな者をただただ挙げていく。
最近、刃牙の読み過ぎで、ツイッターでもずっと夜叉猿とドリアンの話しかしていなかった。その前まではモンハンのこやし玉にハマっていたため、こやし玉関連のツイートしかしていなかった。ここらでちゃんとブログに吐き出さないと消化不良を起こしそうなので、この企画に至った次第である。
今回ばかりは刃牙シリーズを御存知ない方には全くわかりようがないエントリーなのだが、何となく「こんなキャラがいるんだー」とか思いながら楽しんで頂ければ幸いである。
ちなみに、紹介文で「最強」とか書いてあるのは、枕に「勇次郎を除いて」が付くものとして読んで欲しい。
 
それでは行きましょう! カウントーダウンッ!
きゃおらッッッ!!!!
 
第10位…ガイア  160cm程度、?kg / 環境利用闘法

多重人格であり、本来の人格(ガイア)は普段は気弱な衛生兵「ノムラ」の人格に隠れている。ゲリラ戦・白兵戦のエキスパート。
脳内麻薬をコントロールし超人的な身体能力を発揮する他、相手の攻撃意図を事前に察知するエスパーにも近い能力を有する。

中学時代の刃牙に文句なしで負けたために低い評価を受けがちなガイア。しかし、ガイア自身もあの頃から成長したと思いたい。
死刑囚編でシコルスキーをめった打ちにしたときは、読者から賛否両論が出たが、個人的には実に嬉しい展開だった。何せガイアは軍人最強の男である。ちょいと芸の利く死刑囚なんざ手玉に取るくらいで丁度良い。
ガイアvsシコルは、このマンガにおいて「過去に敗れた者が必ずしも弱いわけではなく、また勝敗による単純な三段論法は必ずしも通用しない」ということを象徴する意味深い一戦であった*1
初登場時、人格がノムラからガイアに変わるシーンも非常に緊張感があって良かった。
描き方によってはむちゃくちゃ格好良くなるであろうキャラの一人。超作画のアニメでガイアが都市戦闘を繰り広げるところを見てみたい。
 
第9位…ビスケット・オリバ  180cm強、180kg強 / 力任せ / モデル:セルジオ・オリバ

怪力無双のキューバアメリカ人。「ミスター・アンチェイン(繋がれざる者)」と呼ばれ、アメリアリゾナ州にある『アリゾナ州立刑務所』に収監されている囚人でありながら、同刑務所を自由に出入りし、犯罪者を捕獲する特殊な立場にある。
極限まで鍛え上げた肉体こそが武器であり、防具である。攻撃は力任せに殴る、投げつけるなどが大半であり、防御では受けの姿勢を取ることすら殆ど無い。

ただでさえ腕力が物を言うこの世界にあって、腕力世界一というのが如何に凄まじい存在であるか、ご理解頂けるであろうか。
飛行中の輸送ヘリを腹筋で引っ張る。鍛え上げられた大胸筋は銃弾も日本刀も通さない。ただ走るだけで全てのドアも壁もぶち破る。腕力のみで米国大統領と同等の権限を持つ男。
筋肉に特化したキャラとして、オリバはきちんと大物に描かれて良かったと思う。過剰積載した筋肉や、豪奢な自室、膨大な書庫が不安の裏返しであってもいい。オリバはマリアという伴侶を以て、平時は常にアメリカ最強の男であり続ける。
一応、本作の物語の大筋は、刃牙が成長し勇次郎に立ち向かって勝つことにある。つまり、刃牙が“あの”勇次郎に勝つ、もしくは勝ち負けのレベルにまで到達する事に説得力を持たせなければならない。
刃牙自身が言っているように、生半可な相手と闘っているだけでは勇次郎の領域には決してたどり着けない。この壮大なるスパーリングパートナー探しは、ある意味、作者である板垣先生が自分自身を説得するための物語とも言える。
刃牙が勇次郎の領域に到達するためのキーキャラクターとなった対戦相手は、これまでに3人。烈、ピクル、そしてオリバだ(ジャックもか?)。オリバはその役目に相応しい凄まじいファイトを見せてくれた。
…勇次郎との力比べは「そりゃないぜ板垣先生…」って感じだった。
 
第8位…マリア

オリバの恋人。昔は誰もが振り返る美人だったが、病に冒され、投薬の副作用で肥満化。キングサイズのベッドを一人で埋め尽くすほどの巨体になってしまう。しかし、強靭な精神力を持っており、美しかった頃の気高さを失っていない。かなり気難しい性格。

彼女も本作刃牙シリーズに出てくるから相対的にインパクトが薄いのかも知れないけど、むちゃくちゃ良いキャラクターだと思う。
天才柳沢教授の生活』にも没落しても誇りを失わない令嬢の話があったが、マリアのエピソードはその究極とも言える。
オリバとのジャンケン勝負、「ダーリン…わたしだってギリギリさ…」のセリフ、ステキ過ぎるレディーであろう。刃牙シリーズの数少ない女性キャラクターの中では最も魅力的ではなかろうか。
案の定、登場するたびに美人になっていった。
 
第7位…夜叉猿  230cm程度、?kg / 野性

飛騨の奥山に代々住まう謎の霊長類。推定年齢150歳。ゴリラより遙かに巨大な体格を持ち、より人間に近い二本足歩行が可能。知能も高く、先祖を祀る習慣がある。雑食性で人間もよく獲って食べていたと言われ、地元の伝説や童謡にその存在が語り継がれている。若き日の範馬勇次郎をも満足させる程の戦闘力を有する。

本作のファンは夜叉猿をバカにしすぎである。夜叉猿初登場時の緊張感と絶望感を忘れてはいないだろうか。安藤の振るうサーベルが全く歯が立たず、刃牙を一薙ぎで吹き飛ばしたあの夜叉猿だぞ?
刃牙シリーズ史上で初めて「こんなのどうやって倒すっていうんだよ!?」と思わせてくれた怪物である。筋量だけならオリバにもピクルにも劣るまい。
しかし、夜叉猿、意外と打撃効いちゃうんだよなー。夜叉猿シニアよりも強い夜叉猿ジュニアが克己に瞬殺されてしまい、強さのランクとしてはどうしても下に置かれてしまう。
しかし、加藤の打撃は全く効かなかった。ドリアンと闘ったときの加藤は夜叉猿くらいは倒せる強さだったのだろうか。
モンハンで出てきたら是非手合わせしたい相手だ。こやし玉を投げつけられて「ほきょぁぁあああぁぁぁッッッ!!!!」と藻掻く夜叉猿を見てみたい。
 
第6位…純・ゲバル  180cm程度、?kg / 無隠流忍術 / モデル:チェ・ゲバラ

アリゾナ州立刑務所に収監されている囚人だが、実際は南米のとある島の大統領。祖父より教え込まれた無隠流忍術を流派とする。
元々は自分の島で海賊の頭目をしていたが、17歳で島の独立を目指して組織をつくり、素手による戦闘術を構成員に教え込む。最終的には組織員全員が素手でのハイジャックや原子力発電所の奪取が可能になるに至る。
その構成員をアメリカ各州に2名ずつ配置し、かつ自身はボッシュ大統領自宅へ赴く事で、大統領個人への脅迫によって島の独立を米国から勝ち取った。その後、島の住人からオリバの強さを聞き、闘いを挑むため刑務所に入る。

本気になったオリバに一撃でKOされたため戦闘能力が低く見られがちなゲバル。
勝った相手も、表の世界で活躍していた元スモウレスラーと、今一つ強さのわからないマウスのみ。警備員を全員倒して大統領の邸宅に進入…というエピソードもこのマンガではよくある事なのでインパクトに欠ける。
しかし、飄々としたキャラクター、戦化粧による変貌、「死ぬにはいい日だ」の決め台詞、貧しき民を背負ったその背中…どれを取っても凄くカッコイイ要素で固められている。
劇中では役回りが不運だったと言う他ない。美味しいところを与えられれば凄く光るキャラクターだったと思うのだが…
ちなみに、自分のヒゲを抜いて針のようにして目つぶしに使うという戦法はドリアンも行っている。ファイトスタイルは忍術をベースにしているが、小細工ではガイアやドリアンに一歩譲りそうな気もする。
 
第5位…スペック  220cm程度、?kg / フリー / モデル:アンドレイ・チカチーロ

米国の死刑囚。死刑囚編に登場する5人の死刑囚の中で、最大の体格と残虐性を誇る。水面下数百メートルの潜水艦に設けられた監獄に閉じ込められていたが、脱走して生身で深海から脱出。驚異的な心肺能力を持ち、全力で5分間の無呼吸運動が可能。どんなに頑丈な牢に入れられようと、あるいは強固な警備が敷かれようとも圧倒的な力で牢を自由に出入りする。

死刑囚編で最も期待を裏切らなかった男。
他の死刑囚たちが闘いになんらかの意義を求めようとする中、ただの気紛れで周囲の人間を惨殺するという生粋の殺人鬼。
強くて残虐で自分の欲望に忠実なスペックの有り様は、禍々しいと言うほか無く、そのヴィジュアルも相まって『バキ』の世界にただならぬ緊張感をもたらした。深海から自力で泳いで脱獄というエピソードも人間離れしていて実に良い。
最大の見所は、刃牙シリーズ屈指の名勝負と呼ばれている花山薫との一戦だろう。互いが持ち味をフルに発揮した総力戦だった。
逆に言えば、スペックは花山以外のファイターとはまともに闘っていない。また、その花山が克己のマッハ突きの連打では沈んだのにスペックの無呼吸連打には耐えきったことなどから、強さ議論ではスペックは低く評価されがちである。
しかし、鉄鋼弾の集中砲火を浴びてもノーダメージのタフネス、自由の女神素手で破壊する攻撃力、周りの人間たちを瞬時に屠る殺傷性など、その肉体本来の強さは相当なものだろう。
花山戦は、花山の良さをフルに出させてしまった事が彼の敗因である。というか、相性的には絶対に勝てない相手とも言える。
…あと、最後にバックチョークに出たのも良くなかった。刃牙シリーズでバックチョークが極まる可能性は非常に低いのだ。
 
第4位…ジャック・ハンマー  193cm、116kg / ピット・ファイト / モデル:ダイナマイト・キッド

範馬勇次郎の息子であり、刃牙の異母兄。
「今日強くなれるならば明日はいらない」と公言し、1日に複数回の異常ドーピングを行い、人知を超えた戦闘能力を誇る。副作用のほとんどを常識はずれのトレーニング量と執念で克服し、勇次郎同様、北極熊を素手で倒している。
刃牙や勇次郎と同じく、様々な格闘技を身に付けており、ファイトスタイルそのものは我流である。得意技は、全身の筋肉をフル稼働させたアッパーカットと、椰子の実を齧り取るほどの咬筋力による噛み砕き。
最大トーナメントの後、骨延長手術などで肉体をさらに改造(193cmだった身長が推定213cmに)、より強大な体と力を得た。

人気キャラとして常にその名前が挙がるジャック・ハンマー
刃牙や独歩や剛気が不意打ちを喰らって不覚を取ったり、ワケの分からない行動に出て読者を唖然とさせるのに対して、彼はキャラクターがぶれずいつも強者であり続けてくれる。
少年マンガでよくある「リスクは高いけど乗り越えれば一気に強くなる修行」を、ドーピングという非常にアンモラルで、しかし現実的な手段で行うジャック。一般的な倫理観に照らし合わせれば彼のその有り様は悪だが、スポーツ格闘ではないこの世界においてはこれも“バーリ・トゥード”の一環だと言えよう。
刃牙と違って主人公補正も何もないジャックは、自らの命を引き替えにしてトップ戦線に居座り続ける。
しかし、ピクル戦では完膚無きまでに敗れ去り、刃牙に完全に水をあけられてしまった感のあるジャック。刃牙の言った「アンタはもうファイターとして終わりなんだよッッ」の言葉が恒久的なものでないことを祈る。もっぺん改造だ!
 
第3位…愚地“真マッハ”克己  186.5cm、116kg / 神心会空手 / モデル:山本義徳

愚地独歩の養子。ベンチプレス300キロ、100m10秒台という規格外の体力を持ち、「空手を終わらせた男」「空手界の最終兵器(リーサルウェポン)」などと称される。
正拳突きに使用される関節の回転を完璧に連結し加速させることによって音速を超える拳「マッハ突き」を開発する。
さらに中国拳法の郭海皇烈海王の協力を得て、また父・独歩が開発した菩薩の拳などの要素も取り入れ、マッハ突きを大幅に高速化させる事に成功。その「真マッハ突き」は、史上最強原人ピクルをも一撃でダウンさせる威力を誇る。

「へりくだるつもりはない。闘いに、武に生きるなら誰もが羨む、そんな試合だった」
本当に認めざるを得ない凄まじすぎるピクル戦。現段階で、作中、最も速く最も強い打撃を放った男、それが愚地克己である。
事実上「空手界最強」でありながら、不運な役回りに徹することの多かった克己。
初登場時からして、お調子者で才能を鼻にかけたキャラである。設定こそ「天才」だが、最大トーナメントでトップ戦線に絡める気配などハナからない。花山薫を破ったのを最後の見せ場に、克己の暗黒時代は始まる。
烈に一撃で倒され、ドリアンに二度も不覚を取り、あろうことか加藤のチンピラ空手を師事し*2、ピクルに夜這いをかけた時は勇次郎に覚悟の無さを指摘されて赤っ恥…
その負の経験を貯めに貯めに貯めた上での、ピクル戦の開花がある。
少年マンガに大逆転のカタルシスは数あれど、ここまで貯めの期間が長いこともそうはないだろう。これは脇役の特権と言える。克己は、一キャラクターとして作者に振り回されて搾り尽くされた。
ちなみに、現実のパンチの速さは現役トップボクサーでも最高30数km/h程度だと言われている*3。克己の通常マッハ突きが1300km/hだとして、これが如何にファンタジーな技かご理解いただけるであろうか。私もマネをしてみたが音の壁には全然ぶつからなかった。
真マッハ突きを景気良く2000km/hと仮定すれば、本来なら音の壁にぶつかる以前に超加速によって跡形もなく腕は消し飛んでいる。なんせ、拳だけで見ればいきなり0から2000だ。デザートイーグルの初速すら超える。
ピクルは真マッハを喰らったときにティラノサウルスの尾を連想していた。
ティラノサウルスの体重を5tとして、その全体重を乗せた50km/hの尻尾振りの威力(運動量)を5000×50=250000としよう。体重116kgの克己が2000km/hの打撃を見舞った場合の威力は232000。あながち、克己のパンチは恐竜の攻撃にも負けていなかったのかもしれませんぜ、ペイン博士。
 
第2位…ドリアン  210cm程度、?kg / 中国拳法 / モデル:ショーン・コネリー

米国の死刑囚。外見は思慮深い哲人風だが、死刑執行時に10分間の吊首に耐える超人であると同時に、執行に居合わせた警官らを全員殺害する比類なき凶悪さを発揮する。
特殊繊維などの隠し武器と催眠術を用いて戦うが、その正体は、欧米人として初の中国拳法の最高位「海王」の称号を得た拳法家「怒李庵 海王」であり、武器に頼らずとも神心会の有段者の攻撃を片手で捌くほどの実力を持つ。

むちゃくちゃ好きなキャラである。ドリアン。純粋に拳法家としての実力ならば死刑囚最強なのではなかろうか。
「敗北を熱望しながら現時点まで無敗のあなたは…一度も勝ったことがない」
「喜劇だ…敗北を望んで以来、勝利を飽食し尽くしていると思っていた私が、実は、一度も勝った事がない」
烈とドリアンのやり取りだ。これは言葉そのまま、闘いの勝敗の意味もあるが、それ以前にドリアンの人生そのものを指している。
ドリアンは典型的な「コンプレックスを力に変えてきた男」だ。
程度の差こそあれ、この手合いはスポーツの世界にもビジネスの世界にも政治の世界にも、どの世界にも現実にいるだろう。客観的・社会的には明らかに成功を収めているにも関わらず、その人格には余裕が無く、ふとした拍子に情緒不安定に陥ったりする人間。
周りを打ち負かすことはできる、周りに評価されることもできる、しかし、自分が本当に望んでいるものがなんなのか分からない。“勝ち”続けることでしか、自我を維持できない。
加藤戦でも末堂戦でもそれは表れている。
ドリアンほどの実力があれば加藤など瞬殺できたものを、わざわざ打ち合いに応じ、あまつさえ使う必要のない催眠術までをも用いて、加藤に徹底的な敗北を味わわせている*4。末堂とも普通に闘って勝てたであろうものを、わざわざ末堂に対して心が折れるようなシチュエーションを強いて闘っている。彼は誰かの敗北を食らって空腹を満たすしかないのである。
溢れる才能があった武ですら、自身に力を与えてくれる消費の対象でしかなかった。全霊を捧げることは彼にとって敗北なのだ。
ドリアンはそのまま一生“勝ち”続けることもできただろう。しかし、彼は最終的にきちんと敗北する。自分自身と向き合って精神崩壊するという最後の最後のみ、実に潔かった。
欲しいキャンディを買ってもらえないところから始まった彼の長い闘いは、拳法の後輩、烈海王の一撃によって終わりを遂げる。
 
第1位…花山薫  190.5cm、166kg / 素手喧嘩 / モデル:花形敬

喧嘩師。五百円硬貨を指でひん曲げ、重ねたトランプの一部だけを千切るほどの握力を誇る。非武装・非鍛錬の美学を持っておりステゴロ(ステ=素手、ゴロ=喧嘩)の天才。暴力団花山組初代組長であった父親が13歳の時に抗争で早世したため、15歳にして花山組の二代目組長に就任した。
特定の格闘技や武術の鍛錬を積んだ経験は無く、基本的には格闘の素人である。策略や駆け引きを一切用いず、強靭な肉体と圧倒的なパワーのみで闘いに臨む。その超人的な強さは全て天性のものであり、パワーやタフネスのみならず、巨体でありながら胴廻し回転蹴りを放つなど運動神経においても突出したものを見せる。
得意技は、大きなテイクバックを取る豪快なストレートと、強大な握力によって筋肉を挟み込むように圧縮する事で皮膚・血管・筋肉を破裂させる通称「握撃」。

私は高校時代に学校の授業は一切聞かず、ずっとマンガを読んでいた。クラスの男子全体でマンガを持ち合い、お互いに色々なマンガが読めるようなシステムが出来上がっていたのである。
で、たまたま巡ってきた『バキ』の4巻、5巻、そう、花山vsスペックだ。もう、これが衝撃的なレベルで格好良く、1時間目から6時間目までずっと4巻と5巻を繰り返して見ていた。
私だけではなく、初めてこの一戦を目にした男子どもはどいつもこいつも花山に惚れてしまい、休み時間にみんなで大振りのマウントパンチの練習をする始末。当然、その後のクラスの流行語は「まだやるかい」。
スペック戦のみならず、刃牙戦、克己戦でも名勝負を見せてくれた花山。彼のファンは非常に多く、おそらくは今現在も作中1、2を争う人気キャラであろうと思われる。
しかし、板垣先生の花山の扱いは安定しない。
勇次郎相手に惨いやられ方をしたのは仕方ないにしても、刃牙にもスパーリング相手としてあしらわれたり、油断したところをガーレンに投げられて昏倒してしまったり、かなり損な役を回されたりもする。
それどころか、人気キャラであるはずなのに、実はスペック戦を最後に本編で闘う姿は全く出てこないのだ。恐るべき事に、なんと、連載期間にして11年もの間バトルシーンがないのである*5。ピクルとの押しっくらでちょっとファンサービスしてくれたくらいだろうか。ほぼ完全に傍観者&便利屋にされてしまっている。
2005年から始まった花山が主人公のスピンオフ作品『バキ外伝 -疵面 スカーフェイス-』において、花山は(ファンの)鬱憤を晴らすべく大活躍してくれている…のだが、こちらは連載そのものが全く安定せず、長らく休載が続いている状態。
いつの日か花山が再び闘う姿を見せてくれることを、ファンは願うばかりである。

 
…こんなところです。書いているうちに熱がこもって長くなってしまった。
ベスト10とは言っても、便宜上のもんで実際に明確な差はない。ここに書いていない烈や渋川も当然大好きだ。
刃牙シリーズの場合、そのキャラクターが闘っているところが見たいという意味でも「好き」だったりするし、判断は難しい。
 
刃牙シリーズの公式人気投票は、今のところ2004年の05月に行われたものが最新である*6
その際の順位は…
1位…範馬刃牙、2位…花山薫、3位…愚地独歩、4位…範馬勇次郎、5位…渋川剛気、6位…烈海王、7位…ジャック・ハンマー、8位…ビスケット・オリバ、9位…サムワン海王、10位…松本梢江
…となっている。
1位から4位までの人気が桁外れで、渋川、烈、ジャックがそれに次ぐという印象。
 
ネット上では、きちんと統計が取られた事はないが、主人公の刃牙が好きだという人はなかなかおらず、むしろ変に達観したところが倦厭されてもいる。
しかし、花山、独歩、勇次郎の人気が桁外れで高いのは公式人気投票と一緒。特に花山はスピンオフ作品が作られているだけあり頭一つ抜けている感がある。またジャックハンマーもネットでは好きなキャラとしてよく名前が挙がる。
ネットだけのローカル投票だと、1位…花山、2位…勇次郎、3位…ジャック、4位…独歩、5位…烈、という感じになるだろうか。

 
どうだろうか。ただ私が好きなキャラを挙げていくだけのエントリーではあったが、もし本編が気になられた方は一度単行本を読んでみて欲しい。
「そういや、刃牙ってちゃんと読んだことないなぁ」という方も、シリーズぶっ通しで一気読みしてみてはいかがだろうか。絶対に頭がおかしくなること受け合いだ。
ちなみにこのマンガ、バトルしかしていない上に、基本、女性キャラは“雌”扱いなので、あまり女性向きの作品ではない。ただし、刃牙のかーちゃんみたいに強い雄が大好きな雌なら読んでみるのもいいと思う。
単なる人気漫画ではなく、常にセンセーショナルで、連載中でありながら伝説になってしまう作品。それがグラップラー刃牙シリーズなのだ。
貴方の本棚の『君に届け』の横に、是非。
 
きゃおらッッ!!!!
 
おわり

範馬刃牙 27 (少年チャンピオン・コミックス)

範馬刃牙 27 (少年チャンピオン・コミックス)

 
【追記】…インタビュー
このマンガでは、目撃者にインタビューする形でバトルが解説されるということがよくあるのだが、一体どこの誰がインタビューしているのだろうか。
 
おしまい

*1:その最たるものが公園補正のかかった本部だろう

*2:でも私は加藤好きです

*3:遅いと思われるかも知れないが、それでも秒速約10mだ。モーションを無視すれば1m先の相手に0.1秒で到達することになる。

*4:加藤の見せ場だから長引いたって話は置いといて

*5:現在もその記録は更新中

*6:投票期間中は擂台賽編中盤