Blue Gender(ブルージェンダー)


【ネタ】…アニメ Blue Gender(1999.10-2000.03) 制作:AIC 監督:阿部雅司
 
【説明】…TBSで放送された近未来SFテレビアニメ作品。全26話
現代(劇中2009年)の医学では治療不可能な病気を未来の医療技術に希望を託したスリーパーと呼ばれる冷凍睡眠患者。
その一人、海堂祐司が目覚めたのは巨大な虫を彷彿させる謎の生命体、BLUEによって支配された西暦2031年の荒廃した地球だった。
何も分からないまま、地球人類の存亡を賭けた壮絶な戦いの真っ直中に放り込まれた祐司の新たな「生きる」為の戦いが、今始まる。

 
【独断】…ムシキングブームの先駆者
GOPさんのおすすめアニメを見ようツアーその3。『ブルージェンダー』。
アニメ自体がおすすめというより、ヒロイン役が桑島法子さんだったから猛烈にプッシュしていたのではないかという疑いがある。(ちなみにOP・EDを歌っているのも桑島さん)
私のリアル友人GOPさんがこの作品のDVDボックスを買って、それを3年ほど前に私に貸してくれたのだが、私はずっと見ずに放置していた。…いや、正確には、5話ほど見てそこから先をストップしていた。
初手からあまりにもあんまりな展開が続く上、どう考えても面白くなる気配がなかったからである。
GOPが我が家に来るたびに「いい加減見ろ、この野郎! 殺すぞ!」と、絶えず恫喝してきたがそれでも見なかった。
しかし、先日、ついにブチギレたGOPが深夜から明け方まで我が家に居座り、続きを強制視聴させるという手段に出る。リアル友人のPも巻き込まれ、3人で20話近くをぶっ続けで視聴するハメになってしまった。
 
そもそも、本作ブルージェンダーは何を目的とした作品なのかがサッパリ解らない。
斬新さ…なし。格好良さ…なし。ギャグ…なし。萌え…なし。メディアミックス要素…なし。SF考察…テキトー。作画…不安定。アクション…しょっぱい。ホラー…怖くない。キャラクター…すぐ死ぬ。主人公の髪型…いかれている。と、“普通の目”で見てしまうと見所が皆無なのである。
手っ取り早く売れるような作風でもないし、かといって作品性に特別こだわっているような感じでもない。謎の作品なのだ。
 
まず、マシンに乗った人間が巨大な虫を相手に戦うSFアクション…というのが既にダサイ。
放送されていたのは90年代の終わり。『エヴァ』も『ナデシコ』も『ガオガイガー』も『ブレンパワード』も一応過去の作品である。そんな中、満を持して世に送り出されたのが虫とサバイバルバトルをするロボットアニメとは…
その虫も「想像を絶する大きさ!」とか「目を見張る特殊能力!」とか、そういう魅せどころや新しいアプローチがあるわけではない。5〜10mサイズのいかにもなただの怪獣だ。マシンのデザインや挙動も半端にリアルで派手さに欠ける。かといって、本格的なミリタリーとして描かれているわけでもない。
そして、物語を見てみるとグロ!グロ!エロ!グロ!と、インスタントなB級要素を「どおりゃ!」と連発してくる。
ならば、エログロ好きにはたまらない逸品なのか! …というと、そういうわけでもない。作画も話も基本雑なので、色気も迫力も悲哀もない。どこか気が抜けていて、退廃的で凄惨な展開がむしろ面白おかしくすら感じられてしまうのである。

 
第1話。22年ぶりに冷凍睡眠から目を覚ました祐司(声:野島健児)の前に現れたのは、巨大な虫のような生物「BLUE(ブルー)」だった。スリープ状態の祐司を運んでいた人間たちは、その場でブルーに殺されてしまう。キシャー。祐司失禁。周りを見渡せばブルーの作った人間肉団子が沢山転がっている。さらにビビる祐司。そりゃビビるわ。
祐司のピンチを救ったのは、アーマーシュライクという巨大人型ロボットに乗った謎の美女マリーン(声:桑島法子)だった。マリーンと彼女の仲間たちは、その場にいたブルーを倒し、ブルーの巣窟と化していた冷凍睡眠施設を爆破。祐司の“回収”に成功する。
彼らは、自分たちが宇宙空間にあるコロニー「セカンドアース」からやって来たスリーパー回収部隊「グランザイル」であると祐司に告げるのだった。
 
うーん、いきなりぶっ飛ばしている。『北斗の拳』並に「世界が崩壊した」というのが1秒でわかる素晴らしいスタートだ。
そして、マリーンたちグランザイルのメンバーもなかなかキャラが立っていて面白い。
金髪で変な髪型をしたクールビューティのマリーンを筆頭に、如何にも出来そうな軍人といった風情のチームリーダー・ロバート、渋いモヒカン黒人マルコム、やたらと血の気の濃いキース、キースの相棒で可愛い系男子のジョーイ、筋肉質で腕の立ちそうな女性軍人レッド、キースに突然胸を揉まれても全く無表情なミニー…と、なかなか濃いキャラが揃っている。これから先どんな人間模様やチームワークを見せてくれるのか楽しみなってくる面々だ。
 
…と思いきや、グランザイルのメンバーは第2話で半数以上死ぬ。
その死に方たるや凄まじい。いや、とてつもなく残酷だというわけではなく、そのあっけなさが凄まじいのである。
ジープに乗っていたマルコムは倒れかかってきたアーマーシュライクに踏みつけられて死亡。レッドは運転していたトラックが瓦礫に乗り上げフロントガラスに頭を打ち付けて死亡。そのトラックに同乗していたミニーも後頭部を打って死亡。キースは考えなしにブルーに突撃して死亡。
…二次元とはいえ、人が死ぬ場面に対してこんなこと言っていいものかと思うが…ハッキリ言って爆笑必至である。死にっぷりがカンタン過ぎる。まるで二昔前の洋ゲーのようだ。
ちなみに、少しだけネタバレすると、第5話を終えた時点で祐司とマリーン以外は全員死ぬ。
あれだけ立っていたキャラたちをこうもカンタンに殺すということは、この先にもっと潤沢に面白いキャラクターたちが控えているのか…というと、別にそういうわけでもない。
このアニメの物語は、基本的に祐司とマリーン、二人の関係性だけで構成されている。それ以外に多少面白いやつが出てきても、物語の深い部分に絡み続けることはない。サブキャラに与えられている選択肢は戦線離脱か死の二つのみである。
   
 
死にはしなかったものの悲惨だったのは、遊牧民の娘エリナである。
地球での旅の途中、マリーンとはぐれた祐司は遊牧民に拾われ、そこで一時彼らと生活を共にすることになる。
その最中、なぜか祐司に惚れる遊牧民の娘エリナ。祐司はマリーンの顔がちらつきながらも、エリナの甲斐甲斐しい態度を悪からず思い、彼女と一線を越える。
まずこの時点で視聴者としては「えー!?」である。貞操観念が希薄な本作とはいえ、祐司の成り行き任せも大したものだ。
さらに言えば、物語的にエリナがこの先も出続けるとは考えにくい。祐司がマリーンの下に戻るとしても、それはいわゆる…「やり逃げ」ってやつになるんじゃなかろうか。
 
で、この後どうなるのかというと…えー…あのー…祐司くん、まんまやり逃げします。
マリーンの危機を察知した祐司は、エリナを振り切って遊牧民の一団から離脱し、マリーンを助けに行ってしまうのである。当然、そのあとエリナたちと合流する事は二度とない。最悪である。
というか、離脱する際に遊牧民の馬に乗って行くのだが、これは完全に馬泥棒であろう。やりたい放題の祐司。
しかも、凄いのは、やり逃げを決心したときの祐司の顔だ。
決意に満ちたとても良い面構えになっているのである。いわゆる覚醒シーンなんかで使われるような「一皮剥けた」という顔だ。それはこんな場面で使う演出ではないだろうよ。これには視聴していた我々3人も深夜に大爆笑してしまった。
 
 
紆余曲折。祐司とマリーンがセカンドアースに辿り着いてからまた新しい展開があり、スリーパーの秘密が徐々に明らかにされていく…
スリーパーたちは「B細胞」と呼ばれる特殊な細胞を持ち、それがブルーに対抗できる唯一の鍵となるらしいのだ。
具体的なことはネタバレになるので伏せておくが*1、とにかく本作はこの「B細胞」で全てのSF要素を強引に説明しようとする。
「こんなことが出来るのはB細胞のせい」「あんなことになっちゃうのはB細胞のせい」「B細胞」「B細胞」…
指先一つで人間がミンチになる説明を「経絡秘孔」の一言で済ませてきた某北斗神拳のようである。
とにかく、今、B細胞が熱い。
 
かなりふざけた記事になってしまったが、祐司がB細胞に目覚めてからは戦闘も大規模・本格化するので、物語終盤のアクションシーンは本当に少し見応えがある。
しかも、このアニメ、なぜか終盤だけ作画が良いのである。全26話あって、20話前後から絵が(不安定ながらも)キレイになる。意味不明だ。
私たちはDVDボックスで視聴していたので、本放送からのリテイクがあったのかわからないが…普通は逆じゃないか? 序盤の1、2話だけ客を掴むために作画が良くて、あとは低空飛行でたまに頑張るというのが、2クールテレビアニメのよくあるパターンだ。なぜに終盤だけ頑張るか? そこに辿り着くまでに脱落した視聴者があまりにも多いと思うのだが…
特に、最終回の絵のレベルは半端ではなく、ラスボス戦は緊張感と迫力に充ち満ちている。ガチで最終回だけは必見と言える。
  
 
設定もストーリーも絵も大迷走している本作『ブルージェンダー』。
誰がための作品なのか理解に苦しむが、一つだけ言える事がある。
「ほーちゃんファンなら見て損はない」
前述したが、オープニングソングもエンディングソングも歌っているのは桑島法子さんで、ヒロイン・マリーン役も桑島法子さんだ。しかも、このアニメ、マリーンがひたすら祐司に献身的なのである。祐司に感情移入さえできれば、ほーちゃんファンにはたまらない逸品と言えるだろう。
 
で、まぁ、正直言うと…総じて見て、ちょっと面白かった。
少なくとも、2010年の今時、良くできたキャラ萌えアニメ群の合間に本作が放送されたらさぞかし痛快であろうとは思う。
 
寒くなり虫を見掛けなくなるこの時節、皆さん、虫恋しくなりませんか?
虫、いますよ。
でかい虫、沢山いますよ。
Blue Gender』…本当に良いアニメです。騙されたと思って是非御覧になって下さい。
 
おわり

BLUE GENDER COMPLETE BOX [DVD]

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*1:せっかくネタバレを避けているのだから、このエントリーを読んだ方は絶対に本編を視聴して下さい。見なかった場合GOPを送りつけます。