画太郎先生だぁ〜い好き


【ネタ】…マンガ 秋田書店 画太郎先生だぁ〜い好き(2009.10) 作:漫☆画太郎
 
【説明】…漫☆画太郎作の短編漫画作品集
複数の漫画雑誌に掲載されたオムニバス作品を単行本化した一冊。各作品の掲載時期は2007〜2009年。
パワフルな絵柄と破天荒な物語を特徴としたホラーギャグマンガ作品集となっている。

 
【独断】…ギャグ漫画界のZERO
私は、「作家買い」で購入するマンガを選ぶことが多い。
つまり、その作品が載っている雑誌を読んでいなくても、あるいは作品そのものに対する前情報が全くなくても、「この先生の描く作品だったら大体面白かろう」と思って、作家への信頼を基に単行本を買っている。
もう一度言う。作家への信頼を基に、単行本を買っている。
しかし、なぜか、単行本を買うたびに後悔させてくれる漫画家が一人いる。後悔するくらいなら買わなければいい。というか、後悔しているのであれば、既にその時点で“信頼”とやらはないはずだ。
それにも関わらず、その名を見掛けたら単行本を手に取らざるを得ない。そして買わざるを得ない。何か、呪いにも近い魔力を持った漫画家。
その名を漫☆画太郎という…。
 
本当に、なんでいつも買ってしまうのだろうか。買うたびに「ちくしょう! こんなクソ漫画燃やしてやる!」と思うのだが、どうにも購入の手が止まらない。
いや、実際、爆裂に面白いのである。そして激烈にくだらないのである。
読んだ後、何も心に残らない。最近の流行りの「心が暖まるギャグマンガ」的な雰囲気も全くない。ただひたすら、キモイおっさんやら全裸のババアやらが出てきて、「うぎゃあああああ!!!!」とか「ブリブリブリブリ!!」とかやっているだけなのである。
「こんなくだらないモノになけなしの金を払ったのか…」と思うと、いつもしょーもない気分になるんだが、これは完全に惚れた者負けだろう。面白いと感じてしまうのだから買わざるを得ない。
読み出すと、そこには圧倒的な画太郎ワールドがあり、惚れた読者は為す術なく打ちのめされてしまうのだ。
「キモイ!」と「面白い!」の二択しかない至高のギャグ漫画。野に咲く孤高のうんこ。それが漫☆画太郎作品なのである。

ねーよ 
 
今回の『画太郎先生だぁ〜い好き』というふざけた名前の作品集は、集英社刊行『世にも奇妙な漫☆画太郎』の単行本未収録作品や、秋田書店漫画誌不定期に掲載された短編作品を寄せて集めたものになっている。
具体的な内容については…これが非常に説明が難しく…なんというか、一応、童話や都市伝説にありそうな怖い話を描いている。
悪いことをすると恐ろしいしっぺ返しを喰らう! とか、実は身近に殺人鬼がいた! とか、そんなんだ。
ただ、基本的にどの作品も、ホラーになっていないホラーと、いい話になっていないいい話で構成されていて、最終的には「画太郎ワールドです」としか言い様がないのである。
意外と伏線が利いていたりするので、ストーリーテラーとしての画太郎先生の実力も垣間見える…かも知れない。
 
ファンにはお馴染みのコピー画法、トラック粉砕オチが満載で、見ていて思わず「よっ! 画太郎屋!」と、かけ声を出したくなってくる。10年以上使い回されているコピーページもあったりするので、もはやその技法自体が壮大なギャグになりつつある。
まんゆうき』の娘々に代表される、いわゆる「画太郎美少女」も随所に登場するので、萌え漫好きなHENTAI諸兄も要チェックだ。
ただし、収録作品全10話中、9話にSATUGAIシーンがあるので、グロが苦手な方は注意して頂きたい。というか、グロ以前に、画太郎絵が苦手な方は注意して頂きたい。
 
おまけとして、『浦安鉄筋家族』の浜岡賢次先生との合作漫画も収録されている。
ギャグ漫画家同士の合作って、雰囲気の違いや、互いの遠慮なんかが露骨に現れて、大抵つまらないモノになってしまう。…が、この合作漫画は、それを逆手にとって、互いの世界を壊し合うこと自体をネタしている。
文句なしに面白いので、どちらのファンにとっても納得の逸品だろう。
 
シュッとしたセンスの良い“シュール”が持て囃される現代のギャグ漫画界にあって、きちんとウンコと暴力で笑いを取る漫☆画太郎先生。
ツッコミは劇中キャラクターに言わせる必要などない。あまりのくだらなさで怒りに燃えた読者が言えばいい。そんな、男一本グソを体現し続ける求道者。
私と同世代の方は「エヴァ直撃世代」なんて名乗らずに、「珍遊記直撃世代」と名乗って欲しいものだ。
画太郎先生だぁ〜い好き』、貴方の本棚にある『エマ』の横に是非とも置いて頂きたい。
 
おわり

画太郎先生だぁ~い好き (ヤングチャンピオンコミックス)

画太郎先生だぁ~い好き (ヤングチャンピオンコミックス)