『To LOVEる -とらぶる-』が終わった…


【出典】…集英社 週刊少年ジャンプ2009年40号 To LOVEる -とらぶる-(漫画:矢吹健太朗 脚本:長谷見沙貴
 
【説明】…週刊少年ジャンプ2009年40号誌上において『To LOVEる -とらぶる-』の連載が終了したことを指す
To LOVEる -とらぶる-』(とらぶる)は矢吹健太朗(漫画)・長谷見沙貴(脚本)による少年漫画作品である。
恋愛に奥手な高校生・結城リト。そのリトのもとに突然やって来た宇宙人のデビルーク星の王女・ララ。この2人と周りの登場人物が織り成す、ちょっとHな愉快痛快なドタバタラブコメディ。
週刊少年ジャンプ」2006年21・22号から2009年40号まで連載された。
    
 
【独断】…これから何を楽しみに生きていけばいいのか
まぁ、もう生きていても特に良い事はないです。
酢だこさん太郎」から「さん」を抜いてしまったかのような状態です。今の私の心は。

 
ジャンプでは、最後方枠を除いて、基本的に掲載順がその作品の人気の度合い(アンケート集計)を表している。前の方に載っている漫画は人気がある。後の方はその逆というわけだ。
別に決定事項というわけではないのだが、後方での掲載が続く作品は、大抵の場合、数週間以内に連載が終了する。いわゆる打ち切りとなるわけだ。
本作『To LOVEる』は、アンケートは振るわずに単行本は売れているというタイプだったのかなんなのか知らんが、とにかくジャンプ誌上でブービーの位置を確保し、なおかつ至ってフツーにお色気オンリーの連載を続けていた。後方をキープしていた期間は、恐るべき事に1年を超える。
これはかなりあり得ないことだ。変な話だが、普通だったら10回は打ち切りを喰らっているポジショニングである。ティガレックスの真正面でガードもせずに突っ立っているようなものである。
…しかし、『To LOVEる』は死ななかった。単行本加筆修正(主に乳首)というドーピングを行い、土俵際で踏みとどまり、他の不人気作品たちが奈落の底へ落ちていくのに目もくれず、中身のないお色気コメディをやり通した。
 
信じてもらえないかも知れないが、「中身がない」というのは決して悪口ではない。というか、このマンガのいいところは「中身がない」ことなのである。
内気ながらも優しくて、いざというときに行動力のある男性主人公。そして彼のもとにハーレムの如く次々と登場する美少女達。1話完結式で投げっぱなしもアリな世界観。無意味に、しかし適切にちりばめられるサービスシーン。さり気なく心が温まるストーリー。アクがなく丁寧でポップな作画。
「さあ、最高のシチュエーションはこちらで用意した! あとは感情移入し放題、萌え放題! キミ(読者)の好きにしたまえ!」
…とでも言わんばかりだ。
最終回、春菜とララ、二人のヒロインのどちらに想いを告げようか迷う主人公リト。リトは結局どちらを選ぶのか!?…と、読者が息を呑んでいると、「宇宙では一夫多妻もアリ」という素晴らしいオチが待っていたりする。そう、これが『To LOVEる』なのだ!
言い換えれば「無責任」。付け足せば「いい塩梅の無責任」。読者も登場人物も誰も傷つくことなく、ただひたすらにドタバタラブコメディが繰り広げられる。これもまたプロの仕事だと思う。
 
物語がキチンとしてしまうとそこに“責任”が発生する。その作品なりにスジの通ったオチをつける、そうしないのであればそうしないなりに面白かったり美しかったり圧倒的だったりするオチを持ってくる、このどちらかを果たさねばならない。
To LOVEる』の場合、初めからそういった“責任”がほとんど発生しないように作られている。ハナから全部がご都合主義でいい加減に出来ているのだ。ガチンコのラブコメにも、てこ入れのバトル化にも依らず、最後までドタバタを貫き通した。
果たすべき責任があるとするなら、登場人物達を総じて不幸にはしない、ということくらいだろうか。そして、それもちゃんと果たしてくれた。

 
おそらく、中高生くらいだと、このマンガを素直に見られないのではないかと思う。「なんだよコレ、陳腐でバカバカしいな」と感じるのが普通だ。だって実際に陳腐でバカバカしいし。コソコソ隠れて単行本を買っていても、素直に好きにはなれまい。
これがいい歳した大人になってくると、一周回って「やっぱ古手川さんカワイイよな〜」という感じで、萌えに素直になってくる。バカバカしさを楽しむ余裕も出てくる。
さらにもう一周して、マンガを読みながらゴチャゴチャ考えてしまうような成人オタクにとって、こういった作品を楽しむというのは、自戒すらをも兼ねてしまったりする。「素直にE&Eできなくなったら終わりだZE!」という戒めだ。

 
かつて「格闘マシーン」と呼ばれ畏れられた、黒澤浩樹という伝説の空手家がいる。
空手の競技選手として現役だった頃の彼は、毎朝自宅近くの公園でトレーニングをし、その終わりに地元の小さな神社にお参りをしていた。試合での勝利を渇望していた若き日の黒澤は、毎日「勝たせて下さい」と神に願った。
しかし、月日を経て、タイトルをあと一歩のところで逃し続けた彼のその願いは、次第に「毎日健康でいさせてもらってありがとうございます」という日々への感謝へと変わっていったという。修練し続けられる事への感謝、戦い続けていられる事への感謝、引いては生きていられる事への感謝である。
…いい歳をした大人のオタクが『To LOVEる』を読むというのは、つまり、そういうことなのだ。
萌えられる事への感謝、バカバカしさを楽しめる事への感謝、引いてはオタクでいられることへの感謝なのである。
何を言っているのか解らないという方、そんなの私だって解るわけがないだろう。
 
とにかく、『To LOVEる』というマンガが、漫画界の花形「週刊少年ジャンプ」で3年以上に渡り連載されたのは、本当に素晴らしい事だと思う。
萌え要素だけで構成されているはずのキャラクターたちも、作り手とファンの愛着によって、しっかりと魂を持つようになっていた。
今までありがとう&お疲れ様でした!
私は美柑が一番好きでした。
 
おわり

 
【追記】…バトンタッチ?
To LOVEる』の終了は確かに寂しい。
…だがしかし! 我々にはまだバカお色気マンガ『あねどきっ』がある!
んでまた、今週の『あねどきっ』が輪を掛けてヒドい。いよいよもって河下水希先生は頭がオカシイ。もう最高である。
タンクトップ胸チラ、タンクトップが破けて下着露出、着替えるもシャツとショートパンツに水がぶっ掛かり下着スケスケ、再び着替えたシャツがピッチピチ(下半身パンツオンリー)、ハチに刺されそうなところを洸太がかばってマウントポジション、ハチに刺された洸太の腕にキス。
…いや、本当に頭がおかしいんじゃないだろうか…。一回でどんだけ詰め込むつもりなんだ。
背景までしっかり描いてあってコマ割りなんかも凝っている分、読んでいてちょっとした白昼夢を見ている気分になってくる。
 
…うーん、なんというか、「美しい国、日本」って感じだな。
でもまぁ、『To LOVEる』の良さはキャラ萌え・お色気もそうだが、投げっぱなし感にあったと思う。「もうなんでもアリでいいれす」という感じの。だからこそ、アニメであれだけオリジナルエピソードができたんだし。
河下先生のマンガは、「案外“責任”を重くする」ところに良さがあるので、実際の系統としては結構違うだろう。
また無責任で愛すべきバカマンガがジャンプ誌上に出てきてくれたら嬉しい。
 
おしまい
初恋限定。 1 (ジャンプコミックス)

初恋限定。 1 (ジャンプコミックス)