モンスターハンターポータブル2ndG


【出典】…ゲーム カプコン モンスターハンターポータブル2ndG(2008.03)
 
【説明】…ハンティングアクションゲームシリーズ『モンスターハンター』のPSP用ソフト第3弾
プレイヤーは“ハンター”となり、村や街で依頼を受け、特定のモンスターの討伐・捕獲やアイテムの運搬・採取等の様々な「クエスト」に挑む。大剣やボウガンなどの武器を駆使し、巨大な“飛竜”を始めとするモンスターを狩り、クエストを達成していく。
ゲームクリアとなる具体的な最終目的は用意されておらず、クエストの成功報酬や狩猟したモンスターから素材を得て自分の装備を強化していき、より手強いモンスターと戦う事が主な目的となる。
PSP用ソフトとして2008年3月27日に発売された本作は、2009年2月には累計出荷数が300万本に達している(実売本数255万本)。『Wii Fit』と共に日本ゲーム大賞2008年度大賞受賞。

 
【独断】…よけろナッパ!
このゲームをやってはいけないと思う。このゲームをやってはいけないと思う。
なんか、一度このブログ内で本作『モンスターハンターポータブル2ndG』をオススメしたような気がするが…、多分、それは気のせいだ。アレは幻覚。私はそんなものは書いていない。いい加減、正気に戻って欲しい。
一見、善良な名作アクションゲームに見える本作だが、裏の顔は、極悪非道なソーシャルデストロイヤーである。
  
 
本作発売当初、「有名人たちもモンハンシリーズを何百時間とプレイしてますよー!」という感じのCMが流れていた。
それだけ病み付きになるという事を喧伝していたわけだが、それって逆に考えれば、このゲームを始めるということは、プレイヤーは自分の時間を何百時間も食われてしまうということなのである。
 
「え? 自分の好きでやっていることなんだし、面白いと思うなら別にいいんじゃないの?」
…などとお考えだろうか。
甘い。
「病み付き」という言葉をよく見て欲しい。「病み」「付き」である。「病」が「付いて」いる…「病んでいる」のである。
ゲームに使っていい時間と使ってはいけない時間の区別も付かず、それどころか、もはやプレイしていて面白いのかどうかも分からないまま、ただひたすらに時間を費やしてしまうのだ。生活の全てが『モンハン』になってしまう。
仕事を後回しにし、友人からのメールをシカトし、トイレや風呂場にまでPSPを持ち込み、野良猫がアイルー(プレイヤーに協力してくれるネコ)に見え、ビルを見掛けるたびにその大きさを各種モンスターのサイズと比較する…。
そう、病んでいるのである。
私がモンハン中毒だったときの話だ。坊主頭の友人と体面で話しているとき、「コイツの頭を部位破壊すると何の報酬が貰えるんだろう…」などと自分が真剣に考えているのに気が付いて、戦慄したことがある。
「これが『モンハン』の魔力か…」と。
別に、坊主頭を叩いてみても、文明開化の音もしなけりゃ、「坊主の天鱗」が貰えるわけでもない。それでも部位破壊をしたくなってくるのである。
仮に、頭を叩いたことによって友人が怒って、口から煙を吐き出しながら突進してきても、それを逆手に、落とし穴にはめて気刃コンボをフルに喰らわしてやるつもり…ですらある。そう、これがモンハンの魔力なのである。
  
 
まぁとにかく、プレイヤーはその思考と時間の全てを『モンハン』に食われてしまうわけなのだ。
私の場合、今確認したところ、『2G』の総プレイ時間は331時間だった。これでもかなり少ない方だと思う。やり込む人の場合は1000時間を超えることもザラである。
2009年8月1日に、新作『モンスターハンター3(トライ)』が発売されるが、その広告を見てみると、やはり「有名人の『モンハン』シリーズプレイ時間」がネタになっている。
俳優:妻夫木聡さんは「374時間」。これも結構なもんだとは思うが、お笑いコンビ「次長課長」の井上聡さんの「4904時間」(!?)という数字は驚愕せざるを得ない。
いや、だって、1日10時間欠かさずにプレイしても500日掛かるんだぞ。待ち時間や移動の多い仕事だから、携帯ゲーム機でのプレイ時間が自然と嵩んでいくのはなんとなく想像できるが…。実質、働いている時間以外の全てが『モンハン』なんじゃないかという勢いだ。(というか井上さんの場合、仕事としても『モンハン』してるしな)
ちなみに、ゲームをあまりやらない方のために補足をすると、一般的なアクションゲームの場合、普通のプレイヤーが普通にクリアする事だけを考えれば、10〜20時間程度で終わる。スコアアタックや高難度クリアなどのやり込み要素をコンプリートする場合は、その3〜5倍くらいの時間が掛かるが、それでも100時間に達するソフトなど滅多にない。
ゲームプレイに何百時間と費やすことが常識化している本作が、いかに凄まじい魔力を持っているかお分かり頂けるだろうか。
 
神懸かり的なゲームバランス、各種ハードで表現できる最高レベルの映像、細かいこだわりが随所に感じられる世界観、多彩なデザインの装備品、迫力も愛嬌もあるモンスターたち、それらを相乗して盛り上げる音楽…。
ただ漠然と時間を潰してしまうような作品ではなく、ゲームとしての圧倒的なパワーが、プレイヤーを終わらぬ狩りへと駆り立てるのである。
本作は、ゲーマーの夢想を具現化した作品の一つであると断言できる。
 
 
…だがしかし! それでもあえて言う。「このゲームをやってはいけない!」と。
 
非常にヘンな話なんだが、ここまで「素晴らしい作品だ!」と思っているのに、不思議と私はこのゲームが「オススメ!」というわけではない。むしろ、子供やライトユーザーがこのゲームをやるのは、正直、時間が勿体ないとすら思う。
理由は以下の二つ。
① 散々書いたとおり、必然的に時間の掛かりすぎる仕様である
② 一通りクリアしても、ドラマ的な思い出は意外と少ない
なんだかんだ言っても、プレイ時間の多少はユーザーの判断に委ねられるわけだし、②に関してはもはや完全に私の主観でしかない。しかも、仮にそれがその通りだとしても「元々そういうゲームなんだから仕方ないじゃないか」という話である。
…ただ、「大ヒットゲーム」「希代の名作」だということで、誰もが無闇に本作を始めるのは、“客観的に”どうかと思うのだ。
    
 
以前のエントリーでも書いたが、私が『モンハン』を始めた理由は、友人や知り合いの子供たちに本作『2G』をススメられたからである。
で、始めて3週間ほどで、そのススメてくれた子供たちの進行を追い越し、その後、数週間で一通りソフト内のお題を終えて、他のエンタメにうつつを抜かしていたわけだ。
…が、子供たちはまだまだ全然『2G』を終える気配がないのである。
当たり前だ。彼らが1日にゲームをしていい時間は1時間〜2時間程度。大人のように効率的な攻略もできない。下手をしたら、その日の「遊びの時間」はクエスト一つを失敗して、何も進行しないまま終えてしまう…。
というか、発売から1年以上、ずっと『2G』をやっている子供が結構多いというのが、すでに異常事態だ。
余計なお世話だが、ハッキリ言って、勿体ない! それだけの時間があれば、楽しくて思い出に残るソフトがもっと沢山できるというのに…。
 
ゲームプレイの時間なんて基本“無駄”で結構である。有意義である必要などない。生活に支障さえなけりゃ、遊んでいる本人が楽しければそれでOKだと思う。そこに他人がケチを付けるのは野暮ってもんだ。
…というようなことを、以前、伊集院光さんがラジオで言っていた。私も全くもってそう思う。
…のだが、それはゲームそのものが好きだと自覚している大人の話であって、自分の嗜好も分からなけりゃ、遊びの選択の幅も少ない子供が、なんとなくで「やり込み仕様のゲーム」をずっとプレイし続けるのって、なんか非常に勿体ない気がするのである。
友達と共闘することで確かに思い出もできる。…が、それだって長期間ず〜っと続けていれば作業化していってしまう。
 
『モンハン』には、憧れのヒーローもいなければ、最後まで泣くのを堪えるようなドラマもない。
ただそこに圧倒的に楽しい時間があるだけ、という、ある意味、非常にゲーマー向けのゲームなのである。
逆に、自分が「ゲーマーである」という自覚がある人達からすれば、文句の付けようのない作品だと思う。

 
私も、子供の頃、『ロードモナーク』に何百時間と費やしたり、『コンボイの謎』を泣きながら攻略していた暗い過去がある。
なんの…なんの生産性もなけりゃ、良い思い出も全くない。
そして今、「遊びはゲームしか知らない寂しい大人」になってしまったという哀しい現実がある。
…だから、まぁ、ゲームしか知らないにしても、もっと色々なソフトを楽しんで欲しいなぁ、などと勝手に思うわけだ。
 
PSP普及の原動力にもなった『モンスターハンターポータブル』シリーズ。
ここを入り口にPSPを買った人は、他のソフトにも目を向けて貰えたら嬉しいです。
…えーと、例えば、『もえがく@ポータブル』とか。『アーマード・コア フォーミュラフロント』とか。
騙されたと思って、この辺のソフトも是非買ってみて下さい。
騙されますから。
D
 
おわり