ANUBIS ZONE OF THE ENDERS (アヌビス ゾーンオブエンダーズ)
【出典】…ゲーム コナミ ANUBIS ZONE OF THE ENDERS(2003.02.13)
【説明】…プレイステーション2用ロボットアクションゲーム
2001年3月に発売された第1作『ZONE OF THE ENDERS Z.O.E』の直接の続編に当たる。
物語の舞台は22世紀の太陽系。地球人類は人口問題や環境問題の深刻化から宇宙に生活圏を拡げている。
プレイヤーは主人公「ディンゴ・イーグリット」となり、オービタルフレームと呼ばれるロボットを操縦し、火星の軍事組織「バフラム」と戦う。
ハイスピードで自由度の高いアクションが特徴。「Z.O.E シェード」とよばれる3DCG描画技術によるグラフィック、ゴンゾ・ディジメーションの制作によるアニメーション、アクションパートとストーリーパートをシームレスに繋いだ演出、多彩な操作感覚などが盛り込まれている。
キャッチコピーは『未確認浮遊快感』、『僕らは宇宙でやっと自由になれる』。
【独断】…AI萌えゲーム
ゲーム、OVA、テレビアニメと、元々メディアミックスでの展開を前提とした『ZONE OF THE ENDERS』(以下『Z.O.E』)シリーズ。
ゲームの人気を受けてから他のメディアに…というわけではなく、2001年から複数メディアで同時展開。コナミがかなり力を入れていたプロジェクトであることが窺える。小島秀夫氏がゲームのプロデュースするという事でも話題になった。
私はテレビアニメの『Z.O.E Dolores, i』(2001.04-2001.09)だけは見ていて、それがなかなか込み入った設定で面白かったのだが、ゲームの方は気になりつつも今一つ手が出なかった。
というのも、私はロボットシューティングゲーム『アーマードコア』の信者だったため、同系統の作品ながら、なんか“キャラモノ”っぽい『Z.O.E』に、軟派な空気を感じていたのである。
『無印 Z.O.E』のパッケージの裏を見ると、ちょいデフォルメされた3Dの少年少女が描かれている。多分、少年がみょんな事からロボットに乗るはめになって、少女を救って、ついでに世界も救ってしまう、というような話なんだろう。あーヤダヤダ。
男はやはり硝煙と灼けた鉄の匂いが立ちこめてくるようなミリタリー!なロボットゲームをしなければならない。
ロボットに限らないところで言えば、最近、ガチンコシューターたちが興味本位で『東方』や『オトメディウス』や『デススマイルズ』に手を着けて、「いやぁ、純粋にシューティングゲームとして完成度が高いんだよ」などと言いながらコソコソ同人誌を買い漁る…、というような話をチラホラ耳にする。嘆かわしい。世も末である。私はそんな風にはなりたくない。
そんなわけで、気になりつつも2009年になるまでゲームの『Z.O.E』シリーズは放置していたんだが、不意に友人から本作『ANUBIS』をススメられ、ニコニコでそのOPデモに惚れ込み、つい最近になって買ってみた次第である。
「辛辣なエイダ(戦闘支援人工知能)に萌える!」という動画コメントが気にならなくもなかったが、私は純粋にロボット使いとしてこのゲームに興味が湧いたのだ。
友人も「エイダに褒めて貰うためにやるゲームだ!」などと熱っぽく語っていたが、私にとってそんなことはどうでも良い。エイダに褒めて貰うために買ってみただけである。いや、違った、今のなし。3Dシューターとして話題作の貴賤を確かめるために買ったのである。
いざやってみると、これが噂に違わぬ良いデキだった。
ニコニコ動画内のコメントの一つに「簡単操作でニュータイプ気分が味わえる」というものがあったが、正にそのとおり。主人公機「ジェフティ」が縦横無尽に駆け回り、四方八方から襲ってくる敵をバシバシバシバシ倒していく。
基本攻撃はほとんど一つのボタンだけで可能。ただの連打でブレードコンボが鮮やかに繰り出され、ボタン長押しでホーミングレーザーが数十機の敵をなぎ払っていく。
かといって、当然一方的な無双ゲームになるわけではない。ゲームとしてもしっかりしていて、油断してごり押ししているとあっという間に装甲がなくなりゲームオーバー。各ボスも、きちんとその攻略法を暴いていかないとなかなか勝てない。ミッションの内容と、敵の攻撃パターンを把握した上で、立ち回りを鮮やかにすればするほどノーダメージで迅速に攻略できる。
ハイクオリティなストーリーパート→シームレスに繋がれる戦闘パート→的確な状況判断→迅速なアクション→「ジェフティつえー!」→エイダに褒められる→「うひょひょひょひょ!」
というサイクルが実に心地良い。
本作のキャッチコピーは「未確認浮遊快感」、「僕らは宇宙でやっと自由になれる」。
これはやってみればその意味が分かる。このゲーム、機体の基本動作の制約が極端に少ないのである。
飛ぼうがダッシュ移動しようが、別に何かしらゲージを消費するわけでもない。前後上下左右、とにかく速く飛び回って、ジェフティの性能をいかんなく発揮すればそれでいいのである。
慣性計算も良い具合に開き直ったインチキぶりで、実に素晴らしい。前段階でどういう動作をしていようがお構いなしに、機体を好きなように切り返す事ができる。
『アーマードコア』がリアリティを求めた上でのインチキ慣性なら、『ANUBIS』の場合はインチキ技を駆使するためのインチキ慣性という感じで、とにかくはっちゃけた動きを見せてくれる。
特にゲーム後半「ゼロシフト」という瞬間移動技を手に入れるのだが、これがもうカッコイイのなんの。ロックした相手に距離関係なく一瞬でドンッと詰め寄る反則技。しかも回数制限なし、リロード時間もほぼない。だから使えるようになったら常時瞬間移動。
敵からしたらワケが分からないだろう。ディオに殺されたヌケサクのような心境であろうと思われる。
ぶっちゃけて言えば総合的な難易度は低い。よほど積極的にやり込まない限りプレイ時間も短い。
私も初回「HARD」でやって、6時間くらいで終わってしまった。
一度クリアすると、さらなる高難度モードや、幅広い機体選択ができるようになっているのだが、ステージの攻略法自体は分かっているので、自ら制約を課した所謂「縛りプレイ」をやらない限り、あんまり意味はないかも知れない。
ただ、ストーリーとアクションが濃密なままブワーっと一気に駆け抜けていくようなゲームなので、「短くて不満だなぁ」というような感じは、不思議とない。
…むしろ、昨今、時間を貢がせるようなゲームばかりが流行っているので、こういう一本道で痛快なゲームというのは、非常に健全かつ新鮮な感じがした。
「お値段以上 ANUBIS♪」という感じなので、本作は真剣にオススメできる。
2009年7月20日現在、ニコニコ市場だけで2060本売れているというのが、口コミの信頼性を表している。
アニメパートや音楽もいいので、ドラマとしての見応えも十分だ。
ちなみに私に『ANUBIS』をススメてくれた友人は、エイダに怒られるためにわざとミッションを失敗したりしていたが…正直その気持ちは私もよく分かる。
子供の頃、『ゴルゴ13』の「偽空座標X」に出てきたAI萌えの科学者たちを見て、「こいつらとんでもないHENTAIだな、ありえねぇ」と思っていたものだが、まさか自分が将来そんなHENTAIになっていようとは夢にも思わなかった。
『Z.O.E Dolores, i』のAIドロレスに惚れた人も少なくないと思うし、一体コナミは何がしたいんだろうか…。
他所に目を向けると、『戦闘妖精・雪風』とかもいいよねぇ。『バイオメガ』までいくとAIとはいえほぼ完全に“ヒト”だわな。最近じゃ『イヴの時間』ってのもあるか。
…うーん、もうこの国はダメかも分からんね。
おわり
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【追記】…無印『ZONE OF THE ENDERS Z.O.E』
未だに高い評価を受けている『ANUBIS』だが、逆に一作目の無印『ZONE OF THE ENDERS Z.O.E』に関しては、実はあまり評判がよろしくない。
基幹となる世界設定は当然『ANUBIS』と同じだが、『無印』は内向的な少年が主人公で、ストーリー展開もどこか古くさく、その上尻切れで終わってしまう。アクションは当時から良くできていたが、その舞台となるミッションやステージ構成は単調だったため、そこも活かし切れていなかった。
別にユーザーから酷評されたというわけでもないが、“悪い意味”で平均点のゲームだったのだ。
何が“悪い意味”なのかというと、「独断」の項の冒頭でも書いたように、『Z.O.E』はコナミにとって結構大きなプロジェクトの一つだったのである。特に小島組にとっては「『メタルギア』シリーズ以外でもう一本柱を作りたい」とまで意気込んで企画されたものらしい。
そこに来てのこのデキは、内部の人間にとってはほぼ完全に“失敗作”だったと言える。
…らしい。まぁ実際現場に居たわけじゃないんで。
なんでこんな話をするのかというと、『無印』に脚本・ディレクターとして関わっていた岡村憲明氏のブログがWikipediaで紹介されていて、その内容が結構興味深いものだったのである。
『Z.O.E』制作当時の岡村氏の境遇や、ゲームの没案などが結構赤裸々に書かれている。
散々っぱら画像や動画を無断転載しといてなんだが、さすがにここにリンクを貼り付けるのも、まんま引用してくるのも気が引けるんで(楽屋話なんて知りたくないという人もいるだろうし)、興味のある方は検索して御覧になって下さい。
おしまい
- 出版社/メーカー: コナミ
- 発売日: 2003/02/13
- メディア: Video Game
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