ゼーガペイン


【出典】…アニメ テレビ東京 ゼーガペイン(2006.04-2006.09) 原作:矢立肇伊東岳彦 制作:サンライズ
 
【説明】…サンライズ製作のロボットアニメ作品
未来的にデザインされた街・舞浜市に住み、近郊の高校に通う普通の学生、十凍京(ソゴル・キョウ)は、ある日、謎の美少女・三崎紫雫乃(ミサキ・シズノ)に出会う。
シズノは突然「ゲーム」の始まりを宣言し、キョウを荒廃した異空間へ転送する。そこでキョウは美しい光の装甲をまとった巨大ロボットゼーガペイン・アルティールに乗り込み、彼女と共に敵キャラクターを倒していく。
混乱しながらも、そこでの戦闘を「ゲーム」だと思い込んでいたキョウだったが、しばらくして様々な疑問や違和感が彼を襲う。
果たして、キョウが繰り広げるこの戦いは、本当にバーチャルなのだろうか?
残酷すぎる事実と真実を知り始めた時、キョウの本当の戦いが始まる。

 
【独断】…てすとjunは先輩の味方だよ
二次裏で評判だったアニメ作品を見ていこうツアーその5。『ゼーガペイン』。
ネタフィルターなしにド直球で言うと、「名作」です。
放送時期的に、映画『マトリックス』シリーズがまだまだ元気な頃だったんで、世界設定が似通っていた本作は、本放送序盤「はいはい、巨大ロボ版のマトリックスね」というような感じで、結構雑な評価を受けていた。「ありがちよねー」と。
ところが、物語中盤以降、高いクオリティを維持したドラマや作画などが評価され始め、最終回まで回を重ねる毎にじわじわじわじわとその人気を高めていった。放送終了後も口コミで話題になり、未だにコアなファンを数多く抱えている。
昨今、最終回になってもオチを着けてくれないアニメ作品が多い中、本作『ゼーガペイン』は、キッチリと本編2クールでストーリーを完結してくれる。その辺の潔さにも非常に好感が持てる作品だ。
 
それはいいとして、一応、謎解き要素の多い作品なんで、ストーリーに関してネタバレを避けて言えることが少ない。
前回アニメ関連で書いたエントリー『アフロサムライ』は、ネタバレもクソもない作品だったため好き放題書けたが、万一、この記事を読んでから『ゼーガペイン』を見るという人がいた場合、バレがあっては申し訳がない。
 
ただ…、予め一つ言っておこう。この作品のメインヒロインは「シズノ先輩」こと三崎紫雫乃(ミサキ・シズノ)である…と。
他にも女性キャラクターは数多く出てくるが、もしこれから視聴される場合、それらのサブヒロインたちに決して心を惑わされてはいけない。間違っても他の女性キャラクターをメインヒロインなどと思ってはいけない。常にメインはシズノ先輩なのである。

 
主人公・十凍京(ソゴル・キョウ)の高校の先輩として登場するシズノ。
彼女は美人で面倒見が良く、ゼーガ(ロボット)での戦闘でも、日常の学園生活でも、日に陰に、常にキョウのサポートをしてくれる。口数が少なくミステリアスな雰囲気もまた魅力的だ。不意に現れ、キョウに二言三言の助言をし、霧のように消えていく。みんなの憧れシズノ先輩。
…と、これだけを書くと、なかなか良さげなクールヒロインのように見える。
しかし、よくよく本編を見ると、シズノ先輩の行動は基本的にストーカー気質で、変にキョウに依りすぎている感がある。
本来、戦略的な目的があってキョウに接近しているはずなのだが、ストーリーが進むにつれ、その行動にかなり当人の趣味が混じっていることが判明してくる。アニメとしての演出だと言えばそれまでなんだが、水着で現れたり、キョウのシャワールームに入ってきたり、抱きついたまま異空間転送したりと、無駄に挑発的なシーンも多い。キョウとのコンタクトに一々特別な想いを感じさせる。
そのくせ色目を使い切れるほど器用でもなく、ハッキリ言って口べたで仏頂面。ツンデレ失敗というかなんというか…、自分の想いをキョウに伝えるタイミングがあまりに遅すぎる上、その手段も遠回りだ。『あしたのジョー』に出てくる白木葉子並に不器用な女性である。*1

 
「いやー、でも、そういういじらしい女性も良いじゃないか」などとお思いだろうか。
…甘い。
本作『ゼーガペイン』はダブルヒロイン制になっていて、対抗の「泥棒猫」こと守凪了子カミナギ・リョーコ)があまりにも強すぎるのである。色々な意味で、あまりにも“強キャラ”なのだ。
放っておくと、むしろ先輩が鬱陶しいキャラであるかのように対比されてしまうのである。

 
リョーコはキョウの部屋の対面に住む、おとなりさんにして幼馴染だ。まずここからしてズルい。いきなり先輩を3歩ほどリードしている。
しかも彼女は明るい性格で、周囲の人々をひきつけて和ませ、いつの間にか自分のペースに引き込んでいく才能を持つ。
対して先輩はというと、常に影があって、周囲の仲間たちとも一線を引いていて、どこか馴染めていない。というか、味方から「ひょっとしたらコイツ敵なんじゃないか」とすら思われている。
さらにリョーコはゼーガのウィザード(サポート要員)としても「ウィッチ」と呼ばれる特別かつ強力な才能を持っている。
ゼーガのガンナー(操縦要員)であるキョウは、物語序盤、複座にウィザードとして先輩を乗せていたのだが、物語中盤になってウィザードがリョーコに替わった途端、キョウのゼーガが一気に強くなってしまうのである。戦況判断、換装の早さ、何もかもがリョーコが上。キョウとの掛け合いもバッチリで、先輩のときとの差があまりにも顕著に描かれる。
しかも、言うまでもないというかなんというか、リョーコがまた抜群に可愛かったりする。ルックスも、挙動も、声も、喋り方も。
ストーリー上いてもらわなくては困るものの、ヒロインとしてのシズノ先輩はまぁとにかく不遇である。有能であるにも関わらず同じチームにダルビッシュが居たため控えに甘んじ、あまつさえ「メガネッシュ」などという呼び名が付いてしまった東北高校時代の真壁賢守のような境遇だと言える。
 
 
だがしかし! 私を含め、「ふたば☆ちゃんねる虹裏住人としあきたちは、こういうヒロインを見ると応援せざるを得ない性癖を持っている。
放送当時、「これでもか!」と言わんばかりにヒドイ扱いをされていたシズノ先輩を、としあきたちは懸命に応援し続けた。
特に虹裏てすとjunサーバーは「何があっても先輩の味方である」という、非常に余計なお世話な宣言を勝手にし、先輩の人気向上のため、コラージュ画像をどおりゃ!と作りまくった。…もう一度言うが、完全に余計なお世話である。
虹裏が開設してから、数々のアニメヒロインたちがそのキャラクターをいじくり倒されてきたが、原作のキャラがそのままリスペクト(?)されるという意味では、シズノ先輩は虹裏で最も愛されたアニメヒロインと言えるかも知れない。

 
…ちなみに、『ゼーガペイン』の公式サイトを見ると、放送終了後に行われた「キャラクター人気投票」の結果が載っている。
1位は…カミナギ リョーコ。…そして2位にミサキ シズノ…
なんだかんだ言って2位でも凄いと思うが、その得票の大半がとしあきによる組織票やメガ粒子田代砲なんかだったりしたらどうしようかと心配してしまう。(もう一度言う。余計な心配だ)
…まぁ何があっても、てすとjunは先輩の味方だよ。

 
キスしてグッバイ

ゼーガペイン ビジュアルファンブック

ゼーガペイン ビジュアルファンブック

 
【追記】…今一つの人気
もちろん、『ゼーガペイン』はネタとしてではなく、真剣に素晴らしい作品である。
迷い、挫けながらも強くなっていく主人公キョウの有様は、見ていてイヤミがなく、非常に熱い。
舞台となる舞浜市もキッチリ描き込まれていて、キレイなのにどこか寂しい雰囲気がきちんと表現されている。
賛否のあった3DCGでの戦闘シーンだが、強敵アンチゼーガが登場して以降のそれにはしっかりと迫力もあった。
何よりストーリー、各エピソードのデキが抜群に良く、そのどれもこれもが非常に切ない。そのくせ後味は全く悪くない。
個人的な好き嫌いで言えばムチャクチャ好きな作品だし、各所掲示板を見ても好意的な意見が多く、またその一つ一つに思い入れの強さを感じ取れた。
 
…が、その人気がわりとローカルというかなんというか…。一部の人には深く刺さっているけど、総体としてはあんま認知されていない作品だったのである。
私は自分が好きな作品の商業的な評価をあまり気にした事もないのだが、『ゼーガペイン』の場合は、正直、作品のデキと売り上げのギャップが激しいと思う。アニメファンの間でも、“そういう意味”で結構有名になってしまっている。
具体的には…言いたくないので、興味のある方は「ゼーガ」「売り上げ」「単位」で検索して頂きたいと思う。

 
【追々記】…どこが悪かったのか
強いて欠点を挙げるとすれば、ドラマ部分の充実ぶりに、サブキャラのエピソードや、セレブラムとガルズオルムを巡る戦局の描写が圧迫されてしまったところだろうか。
サブキャラクターはどれもイイのに、一人一人を掘り下げる時間はどうしても少なくなってしまったし、戦局面でも過程が描かれないまま、いつの間にやら人類が大ピンチに陥っていたりした。終盤以外は空母オケアノスだけで戦っているような感じなので、スケールの大きさも感じにくい(敵キャラに至っては実質3人しかいない)。時間的な問題で描き切れていなかった部分が多いのである。
長けりゃ成功するもんでもないが、込み入った設定の作品で2クールというのはやっぱり短い。
メイ姉妹やルーシェンのエピソードがもうちょっと多く入っていれば、真面目な話、キャラモノとして付いてきてくれるファンもかなり多かったのではないかと思う。
 
特にルーシェンなんて腐ったおなごにとっては唾液が止まらないくらいの大好物だろうに。終盤24話、腐女子だってもう期待するのを諦めている頃合いになって、いきなり“あんなこと”をするなんて…。
もっと早くそれをやっとけ!*2 エリンギ(クロシオ先輩)のエピソードにあんなに時間掛けなくていいから!
 
戦いも、先に言ったとおり空母1隻、ロボット2、3機の小編成の状態が続く上、他空母との連携がほとんどないので、どうしても戦略的な見せ場に欠ける。指令のシマも手塚ゾーンの練習に余念がなく、わざとではなく行き当たりばったり感が強い。
 
また、ストーリー全編に渡って伏線はしっかりと張ってあるのだが、わりと視聴者の脳内補完任せの面もある。
 
“強いて”欠点を挙げているわりには、結構熱がこもったような気もするが、逆に言えば、好きだからこそ充実させて欲しかった部分なわけだ。
こういうところを圧迫した分、ストーリーや演出自体はもの凄く力が入っているので、未見の方は是非御覧になって頂きたい。


 
おしまい

*1:その辺もストーリー上の理由があるのだが

*2:本当に早い段階でやられていたら、人気投票でシズノ先輩を蹴り倒している可能性は高かった