アフロサムライ(AFRO SAMURAI)


【出典】…アニメ アフロサムライ(2007) 原作:岡崎能士 制作:GONZO 監督:木崎文智
 
【説明】…黒人でアフロヘアーの主人公が、復讐を果たすため、世界一の剣客を目指していくストーリー
「闇の剣客道」、そのNo.1になる者は世界を制するという。この世界で唯一の掟、それはNo.2だけがNo.1と闘うことが許されているということだけである。
幼い頃、父を目の前で殺され、その復讐の旅を続けるアフロの剣客「No.2」。狙うは父の仇であり闇の剣客道の頂点に君臨するガンマン「No.1」。そして「No.2」を葬り去るため、音もなく忍び寄る刺客たちの影。
果たして「No.2」は悲願を成就できるのか。

 
【独断】…カタジケナイ(カタコトで) ※ネタバレしまくっているので注意
GOPさんのオススメアニメを見ようツアーその1。
ここは「独断」の項なので、文字通り好き勝手なことを言うが、この作品は現時点でGONZOの最高傑作である。
ちなみに中身はない。見て得られるモノなんて何一つない。そしてそれが最高なのだ。
アフロの剣客が、追い縋る刺客たちをただひたすら斬って斬って斬りまくるだけの内容になっている。インチキ日本観と独特の笑いどころ、そして格好いい殺陣、これだけが突き詰められた作品だ。

「WIRED VISION」というニュースサイトでの当作品の紹介記事を見ると

封建時代の日本と、サイバーパンクのクールさがミックスされた、荒涼たる世界

なんていうように、まるで先鋭的であるかのように書かれていたりするが、そんなに洒落たもんじゃあないと思う。悪ふざけで考えた企画を、一流のプロが手掛けたから結果的に格好良く収まった作品…と言った感じである。
GONZOの公式ページから引用した上記「説明」の項を見て欲しい。「闇の剣客道」とある。で、その頂点が「ガンマン」である。ここからしていきなりインチキだ。
いや、それ以前に、架空の時代劇とはいえ、アフロヘアーの黒人が日本でサムライをやっていることに対して、作中何の説明もない。主人公「アフロ」とその親父以外はみんな黄色人種の“日本人”なのに、だ。
「苦み走った顔のアフロ黒人が刀を振るっている姿はなんとなく絵になる」という一点のみでの採用である。

 
ハイクオリティの殺陣も素晴らしいが、本作の魅力の真髄はツッコミ待ちのシリアスなボケにある。
話自体は陰惨で、むちゃくちゃ真剣に進行していくくせに、「アフロヘアーのサムライ」、「“剣客NO.1”のガンマン」、というようなツッコミどころを要所要所に入れてくる。
 
まずハチマキ。
この世界の頂点に立つ者「NO.1」は「一番」と書かれたハチマキを巻き、それに対して挑戦権を持つ「NO.2」は「二番」と書かれたハチマキを巻いている。
…「一番」「二番」…あまりにも直訳すぎる。日本語をよく知らない外国人が、「強者」とか「美肌」とか書かれたタトゥーを堂々と腕に入れてしまうようなものだ。
また、刀や槍、火縄銃なんかで戦っていたシーンの直後に、ポンと携帯電話を登場させたりする。ここら辺のセンスも素晴らしい。いちいちインチキ臭くて堪らない。舞台としては江戸時代の日本みたいな感じなのだが。
 
物語中盤では、アフロの動きを学習させたロボットのニセアフロが登場する。
自分と同じ剣技を自分の1.2倍の力で使ってくるロボに、アフロは剣客として一皮剥けることで勝利する。
真剣と真剣の交錯が織りなす美しい緊張感に満ちた勝負だった。…と思いきや、剣で敗れたロボが手段を選ばずに口からレーザーを吐いたりロケット噴射で突進してきたりするようになる。「初めからそうしておけ!初めから!」という視聴者の総ツッコミ受けながら、ロボはアフロと高度数千メートルでの空中戦を繰り広げる(本当です)。
 
最大のツッコミどころは宿敵「NO.1」との最終決戦にある。
人智を越えた力を使ってくる「NO.1」。アフロも奮闘するが、ついには「NO.1」の魔槍で頭を貫かれてしまう。アフロの復讐の旅もここまでか!?
…と、思いきや、よくよく画面を見ると、魔槍が、うつむいたアフロの頭部に刺さっているのか、そのもっさりした髪の毛に刺さっているのか、今一つ分からない…。
…そう、ここにきて『AFRO SAMURAI』の「AFRO」が活きてくるわけである。
「NO.1!違う違う!そこ頭じゃなくて髪の毛だから!」
視聴者がそう叫ぶのと同時にアフロはカッと目を見開き、「NO.1」を滅多斬りにするのである。…なんかもう、最高だ。
 

 
本作はアメリカで先行放送され、かなりの人気を博したそうだ。こういう亜日本をモデルにした作品はやはりウケるのだろうか。
彼の地でこの作品のユーモアがどういうように受け取られたのか、私はその辺結構興味がある。日本人じゃないと分からないボケも多かったとは思うが、向こうの人達もこの作品の“悪ふざけ感”を感じ取ってくれていたら凄く嬉しい。
セリフは全編英語なのだが、時折出てくるインチキ臭い日本語が、またいい感じのスパイスになっている。「カタジケナイ」。
ちなみに主人公のアフロの声を務めたのは、ハリウッド俳優のサミュエル・L・ジャクソンさんである。……なぜ!?

 
日本ではWOWOWでディレクターズカット版が一度放送されたきりで、良いデキの割に今一つその名が知られていない本作『アフロサムライ』。
上記以外にも細かいツッコミどころは沢山あるので、そこら辺がツボにくる人にはかなり楽しめる作品です。
単純に殺陣も格好いいので、何も考えずに見るのもまた一興。未見であれば是非とも御覧頂きたい。
 
おわり
[rakuten:amiami:10060032:detail]