舞-乙HiME


【出典】…アニメ テレビ東京 舞-乙HiME(2005.10-2006.03) 原作:矢立肇 制作:サンライズ
 
【説明】…サンライズが中心となって展開する、テレビアニメ、コミック等からなるメディアミックス作品
このエントリーでは、テレビアニメシリーズ『舞-乙HiME』を紹介する。
人類が地球から移民して長い年月が経った惑星エアル。そこでは世界中の国々が「乙HiME(オトメ)」と言われる女性限定の職業超常能力者たちによって、政治的・軍事的なパワーバランスを保っていた。
母親を探す少女アリカ・ユメミヤは、自分の母親が乙HiMEであったという情報をたよりに、世界唯一の乙HiME専門学校である「ガルデローベ」を目指し、ヴィントブルーム王国へやって来たのだった。そして、自身もまた乙HiMEのプロである「マイスター」を目指す事になる。
様々なトラブルに巻き込まれながらも、順調にマイスターへの道を歩んでいたアリカだったが、世界は次第に不穏な情勢へと傾いてゆくのであった。

 
【独断】…夕方に放送してくれ
二次裏で評判だったアニメ作品を見ていこうツアーその4。『舞-乙HiME』(マイオトメ)。
ふりがなを振ってくれないと、なんと読むのか分からないタイトルだ。「マイオツヒメ」、「マイオトヒメ」、ではなく「マイオトメ」。強引な読ませ方である。
Wikipediaによると、発表当初のタイトルは『舞☆MAiD』(マイスターメイド)だったそうだ。現在のタイトルで決定したのは幸運だったと言える。『舞☆MAiD』って、酔っぱらったオッサンがノリで考えついてしまったタイトルだろう。『デュアル!ぱられルンルン物語』(1999)ほどではないが、ひどいセンスである。
 
この作品はスター・システムを採用していて、『舞-HiME』(2004.09-2005.03)に登場したキャラクターたちが、それぞれ違う役回りで出演している。
「前作のあのキャラがあんなことに!」とか、「やっぱりこのキャラはこうでなくちゃ!」とか、そういった楽しみが大いにある。(逆に前作未見だと分からない部分も結構ある。ネタバレ回避のために固有名詞は避けるが、『舞-HiME』のキャラが“そのまま”出ているケースもある)
前作では特殊能力(HiME)のなかった珠洲城遥が、本作では「マイスター乙HiME」ハルカ・アーミテージ准将としてバトルでも大活躍してくれたりするのは実に嬉しい。また、前作ではその恋が報われなかったガチレズ藤乃静留。彼女も本作ではシズル・ヴィオーラと名を改め、それなりに恋が成就していたりする。この辺、実に微笑ましい…。…微笑ま…しい…かな…? 後輩の女生徒相手に赤ちゃんプレイ(シズルは母親役)をしていたようだが…。
 
 
基本的には、『舞-HiME』に引き続き、女性キャラ同士の超能力バトルが話のメインになっている。
舞-HiME』では、「HiME」が武器やメカメカしい魔獣を物質化(召喚)して戦っていたが、『舞-乙HiME』では「乙HiME」が「ローブ」と呼ばれる特殊なスーツを物質化(装着)して、自ら肉弾で戦うようになっている。
その「ローブ」のデザインも、如何にも“アーマーもの”といった風情で、等身大ヒーローの色合いが濃い。
ストーリーも、前作のような突飛で陰惨なバトルロワイヤルではなく、主人公アリカの成長物語として、比較的明るい雰囲気で進行していく。ゴールに至る筋道も見えやすい。
総じて、青少年ウケする内容であると言える。
地上波では深夜放送されていたが、雰囲気的には、90年代のテレ東18:00台アニメ…という感じの作品だ。バトルが派手で、女の子が沢山出てきて、それでいて熱血。
  
 
個人的には夕方に放送されると視聴できないのだが、こういった作品は夕方にガンガン放送してくれないものかと思う。
なんと言うか…ただの「アニメ好きの少年」を「腐れオタク」に変貌させてしまうような作品、そういった作品が夕方に充実してくれていると嬉しい。
見れば間違いなく面白いし、話もわりと分かり易い、ただちょっとオタク寄りなつくりなんです。…というような作品が、思春期の少年・少女を間違った道に引きずり込んでいくのである。そうして優秀なオタクがまた一人また一人と誕生するわけだ。
 
というか、テレビ東京の放送スタンスは元々そういうものであったはずだ。
我々の世代だと、『天空戦記シュラト』(1989-1990)でやおい属性を、『キャッ党忍伝てやんでえ』(1990)でケモノ属性を植え付けられ、『ゲンジ通信あげだま』(1991-1992)でお色気を知り、『覇王大系リューナイト』(1994-1995)や『赤ずきんチャチャ』(1994-1995)あたりでいよいよ変な方向に走り出し、『機動戦艦ナデシコ』(1996-1997)の頃には取り返しが付かなくなっている…というのが、よくあるパターンだった。
そもそも、角川系の作品を軒並み放送していたんだから、その時点で完全にオタク寄りのラインナップである。テレ東は日本をダメにするつもりだったのだろうか。御陰様で我々の世代はみんな頭の中に二次元の花畑が咲いている。

 
…話を『舞-乙HiME』に戻すと、つまりは、結構純粋にいいデキの作品なのである。
本作は話の縦筋がハッキリしている分、エピソードの積み重ねが、そのままクライマックスへの盛り上がりに繋がっていく。
アホながらも純粋にマイスターを目指していくアリカが、敵味方問わず、血塗られて凝り固まったみんなの心を解きほぐしていく。
 
私が見ていて「いいなぁ」と思ったのは、アリカとヴィントブルーム女王マシロが互いに励まし合っている場面だ。これはストーリー全編に渡ってしばしば見られるシーンで、二人の友情はこの作品の物語の軸にもなっている。
立場は全く異なるが、二人とも同い年で気が合う。どちらも優等生とはほど遠く、頑張りが空回りしながらも、互いに励まし合い、一歩ずつ前進していく。どちらかが転べばどちらかが引っ張り、話が進む毎に共に成長していくのである。…私はこういうベタに弱い。
 
 
スター・システムなだけあって、その他のキャラクターも全般的に良い具合に力が抜けている。どのキャラもフットワークが良いというかなんというか、個性が強調されて活き活きとしている。
また、「国家」「政治」の要素も含まれているので、国の様子や街並みの描き方もかなり丁寧。架空の星が舞台なだけに、大道具・小道具も一々ちゃんとデザインされている。そういうところも含めて、結構ガチで良作なのだ。
もし、御覧になるのならやはり前作『舞-HiME』を見ておいた方がいいが、本作単独でも楽しめる内容になっている。
よろしければガッと一気視聴して頂きたい。オススメです。