I ♥ NT(アイ・ラブ・ニシトーキョー)


【出典】…東京都多摩地区
 
【説明】…「私は西東京を愛しています」という単文をポップに英訳したもの
元ネタである「アイ・ラブ・ニューヨーク」(I ♥ NY、I Love New York)は、世界的に有名な判じ絵ロゴマークで、1977年にニューヨーク市のグラフィックデザイナー、ミルトン・グレイザ− (Milton Glaser) によって制作された。
ハートのシンボル「♥」で"Love"を表現している。 「I ♥ NY」のロゴがプリントされたグッズ(Tシャツやマグカップ、キャップなど)はニューヨークみやげの定番。マンハッタンにある商店では買物の際のレジ袋にもこのロゴ(の模造品)が描かれていることがある。ニューヨーク州観光局の登録商標であるが、パロディとして多数の模造デザインが生まれた。
 
 
【独断】…地獄
数年前(2002年〜2005年くらい)、「I ♥ NY」のロゴが入ったTシャツを着ている人を街中のあちこちで見かけた。
ハッキリ言ってあのロゴは目立つ。シンプル故に主張が激しく、人混みの中でもキレイに浮いている。見かけるたびに「あっ、また居た」と思ったものだ。あれだけ着ている人が多かったんだから、同じシャツを着ている人同士ですれ違う事も多々あったと思うんだが、それって本人たちは一体どういう気分だったのだろうか。
当時、「俺みたいなドブ臭い下衆男には解らないけど、きっとあれはオシャレなんだろうな」と思ったのと同時に、「ひょっとしてみんな狐に化かされてるんじゃないだろうか…」と、不安になったものである。…この先、カイカイキキなんかがああいったブランドを仕掛けていった場合、その度に私の心は不安定になりそうな予感がする。
…真面目な話、あのTシャツが日本で流行ったのって同時多発テロの直後だったので、「ひょっとしたらあのTシャツの売り上げって、直で義捐金になっているのかな」とも考えていたのだが、今テキトーに調べてみたところ、特にそういった話もないようだ…。ただ、「I ♥ NY」のロゴ自体がニューヨーク州観光局の登録商標なので、結果的にそちらに流れることもあったのかも知れない。
 
はい。で、オシャレなニューヨークの話はお終い。海外ドラマ『フレンズ』(1994-2004)の舞台として、私も大好きなニューヨークだが、ここからはもっともっと素敵な街をご紹介したい。
アジアが誇るエキサイティング・シティ!「西東京」のお話である。「西東京市」ではなく、「23区外の東京全般」。
…ハッキリ言っておくが、東京は、23区から一歩でも足を踏み外すと地獄になる。
八王子あたりは大学が数多くあるので、地方から進学のために上京してくる若者もかなりいる。…が、東京でのキャンパスライフに淡い期待を抱いて上京してみれば、「ウチの実家よりも田舎だ…」と落胆する人が大半を占める。まず間違いなく、“東京”に対する幻想を打ち砕かれる。しかも、高尾には天狗がよく出没したりする。

 
私は、小学生の頃に江戸川区から八王子市に越して来たんだが、当時、結構驚いたのが、八王子って微妙に訛りがあったのである。いや、地域による発音の違いだったのか、ただ単に子供のコミュニティとしての差異だったのかは、今となっては解らないのだが、結構細かいところで「アレ?」「アレ?」と、違和感を覚えたものである。
語尾などの細かい発音の違いに関しては憶えていないが、分かり易いところ、例えばジャンケンのリズムが違っていたりした。
江戸川区荒川区葛飾区なんかでは、特に抑揚もなく「ジャンケンポン」で出す。ゆっくりやるときは「ジャン・ケン・ポン」という感じ。基本的に無駄なくリズムは早い。八王子市のあたりでは、なぜか「ジャ〜ン〜ケ〜ン〜ポン」なのである。初めて聞いたときは非常にイラッとした。なんなんだその間延びは。こっちは早口で「ジャンケッポッ!」と出したいのに、八王子のガキどもはニヤニヤしながら「ジャ〜ン〜…ケ〜ン〜…」と溜めるのである。ううううううぜえ…。

 
あと、2グループに分かれて一方が一方をハントして拘束する遊び、アレの名前が違っていた。
東東京では高確率で「ドロケイ」と呼ばれるのだが、西東京ではなぜか「ケイドロ」がデフォなのである。
ウィキペディアでは一応「ケイドロ」として登録されているので、一番メジャーな呼称は「ケイドロ」なのだろうか? 以前この遊びをピープル社がボードゲーム化したことがあったが、その際の商品名も「けいどろ」だった。
江戸川区も大概田舎ではあるのだが、でかいマンションが林立しているので、この遊びをやる際は非常に立体的な戦術・戦略がモノを言った。今考えると近隣住民に大変な迷惑を掛けていたわけだが、例えばエレベーターでの待ち伏せや、棟を移しての逃亡など、頭脳戦の色合いが濃かったのである。
八王子市の場合、地域にもよるが、基本的に一軒家が多い。そんでその周りは山や林しかない(最近は削り尽くされて、そのほとんどが住宅になっているが)。さすがに個人宅の庭に侵入するのは反則だ。つまり、隠れるとしても物影や木の上なんかが限界なんで、スニーキングよりもむしろランニングに重きがおかれる。とにかく基礎体力がモノを言うのである。当然、隠れる技術・捕まえる技術も必要ではあるが、基本突撃、基本全力疾走。なんというか、野生の狩猟に近い。常時走っているうちに、警察側も泥棒側も「フヒヒ!」「フヒヒヒ!」と、段々オカシクなってくる。
同じ遊びとは思えないくらい、面白さの要素が全然違う。

 
…まぁ、とにもかくにも八王子はロクでもない街である。
ヤンキーとヤクザ者は多いし、違法駐輪は多いし、ジャンケンのリズムは遅いし、天狗は出るし、進学校として名高い八王子東高校の校舎はポロいし、本当に地獄みたいなところである。
だが、西東京の全てが、八王子のようであるかと言ったら、そんなこともない。例えば、八王子市の隣りにある日野市、私はこの日野市が大好きだ。
 
まず何が良いかって、日野市は、なんと、「新撰組のふるさと」なのである!
何故「新撰組のふるさと」なのかと言うと、新撰組副長土方歳三と六番隊隊長井上源三郎の出身地が日野だからだ。(「それ、根拠として弱くないか?」とか言わないように)
しかも、日野市はコレに関して結構な力の入れようで、土方歳三資料館、井上源三郎資料館を構え、毎年一回「ひの新選組まつり」として新選組パレードを行っているのである。また、その「新選組のふるさとを訪ねるみち『日野』」が、日本ウォーキング協会の「美しい日本の歩きたくなる道500選」に選ばれているのである。(「500選って、多すぎやしないか?」とか言わないように)
いやー、凄い。壬生村のあった京都や、近藤勇の出身地である調布市を差し置いて「ふるさと」と言い切るところが、実に良い。
…あと、日野市民はみんないい人ばかりだ。私は以前、日野駅でお爺ちゃんが運転するモーター式のシニアカーにひき逃げされたことがあるが、多分あのお爺ちゃんもいい人だと思う。こちらにケガのないよう、ゆっくりとひいてくれた。
 
 
また、日野市の東隣りにある立川市、こちらもまたエキサイティングな街である。
ウィンズ立川と立川競輪場を有し、土日にはフォーマルでビッと決めた紳士たちがギャンブルを楽しんでいる姿が見られる。何事においても真剣な彼らは、時として、騎手・選手に辛辣な罵声を浴びせるが、それは全て相手を想っての事なのだ。
…真面目な話、再開発も進み、結構カッコイイ街並みになってきた立川。テレビドラマ『ごくせん』(2008)の撮影現場としても使われ、今最も注目度の高い街と言っても過言ではない。西東京オラクルベリーとしてこれからも目が離せない。
数年前までは、正直ちょっとゲロ臭い街だったのに本当にキレイになったもんだ。
 
 
他にも、府中とか、青梅とか、国分寺とか、調布とか、いい街が沢山ある(雑なまとめ方)。…イイ!西東京、イイ!
はい。というわけで、皆さんにもエキサイティング・シティ「西東京」の魅力が十分に解って頂けたと思います。
これから東京の大学へ進学を考えている皆さん、どうですか、日野。いいですよ、日野。駅前には、なんと、セブンイレブンと、オシャレなハンバーガー屋さんフレッシュネスバーガーがあるんですよ!…いいなぁ、住んでみたいなぁ、日野。春には新撰組のコスプレをしてパレードにも参加しちゃったりして。これはイイ!
まぁ、それくらいしか褒めるところがないわけなんですけれども、一人暮らしをお考えであれば、是非!
 
…なんか、気が付くと悪口しか言ってなかったような気がするが、要するに私が本当に言いたいのは…
「I ♥ NT」
この一言に尽きるのである。
…まぁ、地獄だけどな。特に八王子。
 
【追記】…二次元系の話をすると
吸血殲鬼ヴェドゴニア』(2001):八王子市が舞台
ねこぢるうどん』(1990):八王子市と思われる背景がある
げんしけん』(2002-2006):舞台モデルが八王子市の中央大学とされている
『幽玄漫玉日記』(1998-2002):作者が会社を設立した調布市が舞台
ゲッツ板谷作品全般:作者の出身地である立川市が舞台
平成狸合戦ぽんぽこ』(1994):多摩ニュータウン(多摩市)が舞台
耳をすませば』(1989):多摩市が舞台
NANA』(2000-):作中に出てくる「K線多摩川駅」という表記から調布市が舞台であると思われる
機動警察パトレイバー』(1988-1994):特車二課のレイバーの製造・メンテナンスを行う篠原重工の工場が八王子市にある
『墓場の鬼太郎』(1965-1968):多磨霊園府中市小金井市)が舞台
めぞん一刻』(1980-1987):東久留米市が舞台
フルメタル・パニック!』(1998-):主人公たちの通う高校が調布市にある
ケロロ軍曹』(1999-):西東京市が舞台のモデルとなっている
ろくでなしBLUES』(1988-1997):主人公たちが通う高校のモデルが都立神代高等学校(調布市
『ギャンブルレーサー』(1988-2006):主人公の住まいが東村山市にある
寄生獣』(1990-1995);町田市と思われる背景が多い
 
キリがないので、この辺で。
ベッドタウンゆえに街並みが落ち着いているので、多摩地区というのはマンガなんかの舞台としては扱いやすいのかも知れない。一応東京都だから、山と田んぼしかないガチの田舎でもないし、都心部のように街毎の色合いが強すぎるわけでもないし、バランス的に丁度良いんだろうか。
上記に挙げた作品のほとんどは「まちBBS東京都多摩地区掲示板」の書き込みを参考にさせもらったんだが、どの作品もエピソードを聞いていると、作家のご当地への思い入れが窺える。
…でも、なんかあんまり明るい作品がない気がする。やっぱり地獄なんだろうな。