なんでこんな事を思いつくのか
【出典】…ギャグマンガ
【説明】…意表をつかれたときに抱く感想
【独断】…ボクシングで言えばカウンター
ギャグマンガで、「なんでこんな事を思いつくんだろう、この人は」という感想が自然と出てくる作品は大抵面白い。「そんなバカな」の「バカ」の部分に非常にキレがあるということだ。もうネタの発想からしてちょっと飛んでいる。
分かり易いところ、吉田戦車先生の漫画なんかが典型的。4コマ漫画でも、出だしの一コマ目からして並の漫画の“オチ”以上のパワーがある。榎本俊二先生の『えの素』も然り。当たり前のように奇妙でアホな出来事が次々と展開される。
所謂“不条理モノ”に限定して言っているわけではない。
森下裕美先生の『ここだけのふたり!!』は別に非現実的な事が起こるわけではない。あくまで少し変な人達の日常がネタのすべてなんだが、「あるある」と言いたくなる部分と「それはない」という部分のズレが非常に面白い(文章では説明しにくいが…)。たとえば、「ダンナは鬼の絵を描くのが上手い」なんて意味不明な設定は、一体どこから湧いてくるんだろうと思わせる。
難しいのは、ぶっ飛んでさえいればそれでいいというわけではなく、変な状況なのに何故だか感情移入してしまうような部分が必要なのである。「気持ち悪い」でも「エロい」でもなんでもいい。それがないとただ奇を衒っているだけになってしまう。
…なんか真面目な話になっちゃったが、ギャグマンガ家って大変だなぁと思う。
一部のプロ作家は、どっかで自分なりの“コツ”というか、描く上での“ノリ”みたいなもので掴んでいるんだろうが、それがない人は年柄年中オモシロオカシイ事を考えていなきゃいけない。また、皮肉なことに、そうやって力んで考え抜いたギャグって大抵面白くなかったりする。
読者の常識の斜め上をポンと突くには、ボクシングで言うところの「カウンター」のように、どこか力が抜けていないといけないんだろうと思う。「思いついたから描いちゃいました☆」的なアホなノリが必要なのである。
端的に、というか、身も蓋もないことを言えば、それは「センス」ってやつなんだろうが。
- 作者: 森下裕美
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2002/03
- メディア: コミック
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一口にギャグマンガと言っても、「上手いこと」やら「あるあるネタ」やら「ほのぼの」やら「ドタバタ」やら「楽屋ウケ」やら、色々あるわけで、必ずしも上記のようなセンスが必要なわけではない。
私も力業のギャグが結構好きなので、あまりにもシュールを気取って描かれたマンガは逆に洒落臭いとも思う。