ネーミングセンス

【出典】…T-260G
 
【説明】…人や物などに名前を付ける際の名付け主の感性
 
【独断】…ヴァギナ!
ゲームなんかをやっていて楽しい&困るのが登場キャラクターへのネーミングである。ほんと、毎度困る。
私の場合は、デフォルト名が設定されているならそのままにしておくことが多いのだが、それはそれで味気ないと感じることもある。デフォルトはいわば元来の名前なのだから“間違い”はない。が、そこに敢えて自分で名前を付けると感情移入度が全く違ってくる。当然デフォルト名が設定されていない場合もあるが、どちらにせよ自分の感性が試される場面と言える。
例えばRPGメガテン』シリーズや『ドラクエ』シリーズなどは、「主人公はプレイヤーの分身である」という考えのもと、デフォルト名が基本的に設定されていない(スピンオフ作品を除く)。主人公が選択肢以外で自発的に喋ることもなく、一人称視点を崩さないための配慮がなされている。
やったことがないので詳しくは知らないが、『MOTHER』シリーズでは、主人公の「ぼく」は勿論、「ともだち」や「パパ」「ママ」なんかの名前をゲームの始めに訊かれるらしい。当然その役柄・名前はゲーム本編でそのまま使われる。如何にも本名プレイをして下さいと言わんばかりなのだが、うっかり自分の家族の名前を付けると、物語序盤のイベントでその家族が死んでしまったりするという恐ろしいオチが待っている…。だからこそ物語に対する感情移入が強まるとも言えるが…。
 
変な名前や、厨臭い名前を付けて、そのデータを友達に見られてしまったときは、なかなか恥ずかしい。
「お前、主人公の名前「アレス」にしたんだ」
「あっ…うん。そ、それはギリシャ神話の戦いの神様の名前から取ってね…」
…なんて、名前の由来や拝借元の説明をしなきゃならないときは最高にツライ。
どこぞから拝借したり捩ったりしたモノならまだいいが、これが完全に自分で考えた名前の場合は、いよいよもって心臓を素手で鷲掴みされたような気分に陥る。
「何この「レイ=ジハード」って名前? 由来とかあるの?」
「あっ…いや…特に由来はないんだけどさ、な、なんか、格好良さそうな響きかなって…ハハ、ハ…」
…なんていう風に問いつめられたら、半日くらいは真剣に自殺を考えるだろう。
 
ゲームプレイであれば、上記のように、いくらかのキャラクターの名付けに迷うくらいだが、これが物語を作る側となると大変だ。ネーミングは商売と自身のセンスを懸けた非常に重要な作業になってくる。
人物は勿論、街、組織、道具、技、あらゆるものに名前を付けなければならない。必然的に当人のセンスが丸裸にされる。
 
私も学生時代に趣味で漫画や小説を書いていたことがあるが、ネーミングには非常に悩まされた。
和名で統一されているならまだ誤魔化せるが、洋名を用いる場合は、自分に語彙もセンスもないことをハッキリと思い知らされる。なっかなか、自然で、格好良く、憶えて貰いやすい名前というのは思い浮かばない。
やはり手っ取り早い方法としてはどこぞから拝借することだ。実在の著名人の名前であったり、神話に出てくる用語であったり、そのあたりがよくある手だろう。
ただ、劇中に出てくる名前が著名人の捩りしかなかったら、それはあまりにも見窄らしい(敢えてそうしている場合を除く)。その捩り方にもよるが、「この作者は自力で名前付ける力がない」ということが露呈してしまう。気付いた人は興醒めだろう。
神話も、ギリシア神話北欧神話ケルト神話インド神話あたりはもう出尽くしている感がある。わざと名前に意味を求めるつもりでなければ、もはや「厨臭い」を通り越して「なんで?」という感想を抱かれてしまう。
 
というわけで、ある程度自分で名前を捻り出すことは必要なわけである。テキトーに響きで考えるのもいいし、英単語のアナグラムでもいい。
敢えてハードルを下げると、個人的には語呂さえ良ければ大体“良い名前”だと思う。憶えて貰うってのが最重要だ。
そういう意味で、最もネーミングが上手いと思う作家の一人に、アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズの原作・監督を務めた富野由悠季先生がいる。
アムロ・レイ」「シャア・アズナブル」「ランバ・ラル」「カイ・シデン」「パプティマス・シロッコ」「ジェリド・メサ」「ヤザン・ケーブル」「ライラ・ミラ・ライラ」「ビーチャ・オーレグ」「モンド・アカゲ」「エルピー・プル」「ゴットン・ゴー」「シーブック・アノー」「キンケドゥ・ナウ」…特にガンダムマニアでもない私でも、主人公格はもちろん、サブキャラクターのフルネームまでもがしっかりと脳に焼き付いてしまっている。この脳への浸透力は異常と言える。
あるいはそこにテクニック的なものもあるのだろうが、この語感は正直、天才的だと思う。文字数にしたらどれも結構多いはずなのに、響きが自然と頭に入ってくる。
逆に、名前自体は短いのになぜか頭に入っていきにくい作品というのもある。具体名を挙げると少年漫画『NARUTO -ナルト-』がそうだ。
『ナルト』は忍者を題材にした作品で、キャラの名前の大半が2〜4文字のカタカナになっている。「サスケ」「サイ」「カカシ」…確かにどれも“それ”っぽい名前なのだが、その響きからくるイメージが類似しやすい。キャラの多さも相まって、段々と「なんか、みんな短くて和風の名前」というような漠然とした印象になってくる。単調な響きゆえに、逆にごっちゃになりやすい。
 
…もう一つ気をつけたいのが、せっかく考えて付けた名前が、何かにカブっている、あるいは実は結構ヤバいスラングだったりするという可能性だ。
どこかで聞いたカッコイイ響きを何も検証せずにそのまま流用すると、とんでもない事になりかねない。
例えば「ヴァギナ」。
いきなりなんだと思うかも知れないが、この単語、響きだけ聞くとえらい格好良くないだろうか? 元の意味を知らなければ、まるでファンタジー作品に出てくる最強魔法のような印象を抱く。
「俺の命と引き替えに! こいつを使う! くたばれ! ヴァギナァァァァァァアアアアアアア!!!!」
…実にあり得る。強烈な閃光と共に術者から半径数kmが消え飛びそうな感じだ。別に巨大な女性器が相手を捕食する魔法ではない。なんとなくラピュタ崩壊の呪文にも似ている。
他には「オーガズム」。
これもまた響きがカッコイイ。なんとなく巨大リアルロボット的なサムシングを連想させる。
『機光騎兵オーガズム』という題名で80年代後半にサンライズ制作でアニメ放送されていた、と言われても信じるだろう。
あと、「スペルマ」。
これは悪魔っぽい名前だと思う。しかもかなり高位で品格もある。レッドアリーマーのライバルとしてカプコン作品に登場しそうな感じがする。
「ホウケイ」。
八極拳の奥義の一つとして絶対に存在すると思う。砲勁!
ディープスロート」。
プロレスの極め技の一種である。男色ディーノが得意とする。(余談だが、バンカーバスターに「ディープスロート」という渾名を付ける米軍のセンスって一体何なんだろうか。流石だ)
 
…言い出すとキリがないのだが、とにもかくにも名前を付けるのは難しい。
まぁ架空の世界の話で済んでいるならいいけど、いざ「自分の子供に名前を付けなさい」なんて言われたら、そりゃ悩むよなぁ。
…「悪魔」くんに対抗して、「天使」ちゃんとでも付けるか? いや、でも、居そうで怖い…。

ネーミングの掟と極意 (エンジニア道場)

ネーミングの掟と極意 (エンジニア道場)

 
【追記】…蟻の戸渡り
誰が名付けたんだか知らんが、「蟻の戸渡り」という名称を生み出した人はホント天才だと思う。前立腺に日本のわびさびを感じさせる名前を付けるって、凄い。
 
【追々記】…鳥山明
漫画家、鳥山明先生もワケの分からん素晴らしいネーミングセンスの持ち主である。普通物語の主要人物の名前に「ブルマ」だの「トランクス」だの付けんだろう。変な統一感を持たせるところが凄く面白い。